頭の中に響く声
”周りを探しても誰もいないよ。あたしはここにいるんだからさ”
・・はっきりと聞こえた。
今度は意外な程クリアな声だった。
しかも、信じがたい話ではあったが、声は真魚の頭の中から聞こえてきたのだった。
わ、私の中に誰かいる・・
で、でもまさか、そんな事があるわけない。やっぱり・・
”別にお前はおかしくないんだって。
幻聴とやらでもない。あたしは現実にここに存在してるのさ”
あ、あなたは誰?
誰なの?
幻聴でないなら、本当にいるなら、何で私の中にいるの?
体が熱いのも、疼くのも、あなたの仕業なの?
”一度にそんなにたくさん質問されても、答えられないだろ!そんな事より、早く電車に乗れよ!”
え、で、電車!?
真魚が振り返ると、とっくに発車してしまっていると思っていた、真魚が乗っていた電車は、まだホームに停車していた。
どうやら、特急の通過待ちをしているらしい。
で、電車に?
またこの電車に乗るの?
あ、頭がフラフラするから動けないよ。
”バカだねお前は、せっかくの獲物が逃げちまうじゃないのさ!”
頭の中に罵声が響く。
声の正体が幻聴なのか、本当に真魚の体の中に誰かいるのか、そんな事を冷静に考えていられる状態ではなかった。
ただ、正体不明の声の主に怖じ気付くばかりだった。