2 お茶会 ②
私のいたテーブルには、私を除いて4人が座っていたので、子爵令嬢の控えめでかわいらしい挨拶の後に、また一人と続く。
次は、伯爵令嬢の自己紹介であった。こちらの令嬢もなんだかどこかで見たことがあるなあと思っていた。
ここまでくると、私は予知的能力があるのではないだろうか、と少し調子に乗りだす。
まあ、そんなわけないよね。と思ったので伯爵令嬢の自己紹介をよく聞いて、相手の情報を上書きしてい
く。
そして、ついに私にとって残り一人となった。最後は侯爵令嬢である。またしても、既視感があったので頭を傾げていると、侯爵令嬢が話始めた。
その瞬間私は体に電撃が入ったようにビクリとしてしまった気がする。
「この声は、、。」と思わず呟く。
目の前にいる侯爵令嬢の声が、前世での私の推しキャラを総なめした、推しの声優の声に似ていたからである。
前世ではバリバリ創作物の沼にハマっていたため、とても詳しい人よりは劣るが、それなりに詳しかった。
だからこそ、必然的に推しができてしまう。
私が推していたのは二十歳上の声優さん。どう頑張っても隠せない、透き通ってハリのある声にいつも耳を癒してもらっていた。
その声が、今ここに。生まれ変わってから、もう心の中でしか会えないと思っていた声がここにいた。
この衝撃的な事実を私は嬉々として受け止め、この侯爵令嬢に興味が出てしまった。
他のご令嬢の自己紹介は、情報としてそれを受け止めていたから、まだ体にその情報が馴染んでいなかった。けれども、こんなに興味をもった令嬢の自己紹介ならば話は別である。
今までにないほど情報を得ようと神経を集中させる。正直いって、傍からみると少々気色悪く見えるかもしれないが、今はその気持をとどめておいてほしい。こちとら、久々の推しの声(注:本物ではない)を聞いているのだから。
そして話を聞いていくごとに頭の中で、カチリ、カチリとパズルのピースが埋まっていくような感覚に陥る。それらが決定打となったのは、私が好きなあるセリフだった。
この主人公は前世オタクであったという設定です。一応。
オタクはこんなんじゃないと思う方もいると思いますが、優しい目で御覧ください。