11 昔の父のこと ①
「公爵様とどう知り合ったか、ねぇ、、。」
無邪気に知りたいと思ったから質問してしまった。なにか答えにくい事情でもあるかもしてないのに。
慌てて訂正する。
「すみません、突然。少し気になったので、その好奇心のまま聞いてしまいました。」
私の謝罪に対して返ってきた声は穏やかだった。
「公爵様とはちゃんとした出会いなんてものはなくて、私がまだ子供の頃から街にいたから。どうやって伝えようかと考えてたところだったんだよ」
(街にいたってどういうこと?)
心の声が顔に出ていたのか、ハリーさんは私の聞きたかったものを説明してくれた。
「こう見えて私と公爵様は同い年だからね、私が子供だった時、公爵様も子供だった。」
そう言ってハリーさんは私の父の昔を教えてくれた。
◇◇◇
正直言うと、昔の私は真面目で、親に言われたことを従順にこなす毎日を送っていたんだ。言われたことができれば親は自慢の息子だと言ってくれたし、近所の人も立派だねと褒めてくれた。
だけどね、そんなわたしが気に食わなかった近所のガキ大将らが、毎日のようにいじめてきたんだよね。で、もうそんなことも日常になりつつあった時に、公爵様が「やめろよ」って言いながら、私がいじめられてる時に現れたんだよ。
公爵様って今はわかるけど、当時は貴族の令息であるとわかるような服装じゃなかった。まあでも、すごい顔が整ってたのは今と同じだね。それに、どこの所の子供かはわからないけど、ずっと街にいたからね。ガキ大将たちもこの街の子供だと思ってたんだろう。私もそう思ってた。だから、いつもの通り、ガキ大将たちが「なんだと」って言ってギャイギャイ騒いだら、公爵様何て言ったと思う?
「うっせーー。あと、ダッサ。」
だよ?この発言もあって、私は公爵家の御令息だと、しばらく信じられなかったね。
でも、公爵様は私を救ってくれて、さらにイタズラをするっていう、自分の意志がちゃんとあるんだってことを表示することを教えてくれたことは確かだ。
イタズラっていっても、誰かを不幸にするようなものではなくて、イタズラだと気づいたときに仕掛けられた人がつい笑ってしまうものばかりだったんだよ。はじめは公爵様と私の二人でやってたんだけど、途中からガキ大将たちもいつの間にか仲間になってたんだよね。ガキ大将たちは悪いやつではなかったんだよ。弟とかに母親を取られたような不満がたまる時期だったから、大人たちにかまってもらっていた僕が気にいらなかった。それに、私もそのことに気づいていたし、自然に仲直りって形でイタズラをする仲間になったんだ。
毎日やるべき仕事はきちんとやるけど、暇を作ってイタズラをしてたんだ。だけどある日を境に、公爵様が急にイタズラに来なくなって、ただの駄弁りにも来なくなった。最後はどこにいったかもわからない、って日が何日も続いたんだよ。
二年くらい経って、もうその時にはイタズラをしていなかったんだけど、ガキ大将たちとは変わらず仲良くしてた。だから、軽い昔ばなしをするつもりで、公爵様のことを皆で話したんだよ。
そしたらね、「久しぶりだな。」って言いながら二年間も姿を見せなかった公爵様が現れたんだよ。
大勢の騎士を引き連れて。
もう少しはやく父の過去が書き終わると思っていたのですが、意外と時間がかかってしまいました。
すみません。
あと、◇◇◇の後からはずっとハリーさんが話してくれている感じです。