1 お茶会 ①
よろしくおねがいします。
「はじめまして、サーフィ侯爵令嬢。」
私は今、全く笑えない気持ちになっている。しかし、今の私は家庭教師の先生から教わった、美しい微笑みと共に発する、落ち着いた声で挨拶することができている。十年間とは、案外長いのね。
生まれてから十年たったところで、私は今後の人生を左右する事を知ったのであった。
◇◇◇
私は、今時な言い方だと転生をした。元々体が弱かったこともあってか、前世では突然流行したウイルスのせいで、若くして死んでしまった。きっと神様もそんな私を哀れに思ってか、いわゆる生まれ変わりをさせてくれたようだ。
転生後の世界は、私が今まで暮らしていた世界線とは異なっていることに、結構はじめの段階で気づけた。
私が現世で生まれた家はなんとびっくり、公爵家なのだが、その公爵家にいても、前世で見たような文明の利器や、産業革命を経た形跡が見られなかったからである。それに、前世の姉が歴女であったため、少々海外の歴史上の貴族に詳しいが、私の知っている人物がいなかったこともあり、いわゆる異世界に転生したのだと確定付けた。
まあ、また新しく体と命が与えられたわけだし、元気に過ごそうと目標をたて、私は転生後の家族ともつつがなく暮らし、公爵令嬢としての学びと経験をつんだ。
毎日の暮らしに満足し、今日は母同士の中が良い他家の令嬢たちとお茶会をしていた。
そこで事件は起こってしまった。
この国(リハイム王国)では、十歳からお茶会などの社交の場に出席することが許されている。言い換えると、十歳になるまでは、家族と家に仕えている人たちと、家庭教師が世の全てである。
だから、私を含め、今日始めて社交の場に出席する同い年の令嬢は緊張してしまう。
だが、皆きっと私と同じように母から、お友達を作ってきなさいと言われているようだ。
自然と空いている席に令嬢は座っていく。
そして、テーブルごとに席が埋まったら、自己紹介を始めていく。
私は一応公爵令嬢なので、一番最後が自然と決定する。
そして、同じテーブルにいた子爵令嬢が自己紹介を始めた。
顔の造形などの細かい情報は知らないはずなのに、どこかで見たことがある気がする。
前世であった人のドッペルゲンガーかな、と能天気なことを考えていたが、今思うとよく考えるべきだったとすごく後悔している。
注:このお茶会に参加する人の髪の色や、瞳の色をあらかじめ覚えておくので、誰がどの家の人なのか、すぐにわかります。