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契約



連続投稿です。

よろしくお願いします。





新葉は両手の力で上半身を上げ、震える足を地面につけようとしていた。ウサギは新葉が逃げようとしていることに気づき、新葉の目の前で両手を上げ、落ち着かせようとした。だが、新葉はウサギの言葉が耳に入らず、もう一度足に力を入れようとする。

「呪術を食べるとかいう話が出たから悪い方向に考えたみたいだけど、そういう方法は取らないよ。僕がやろうとしているのは共鳴の方だから」

「共鳴?」

気づいたウサギはさっきよりも声を張り上げた。新葉はウサギの話の中で聞いたことのない共鳴という言葉が出て、立ち上がろうとするのを止めた。

「共鳴というのは同じ呪術を使えるようにすることだよ。実はこの本は呪術を食べることができないものなんだ。だから力を蓄えるには共鳴しかないんだ。僕はこの本の呪術をご飯にしているから本が力を失うと、困るんだ。お願いだよ」

ウサギは止まった新葉に近づき、新葉の周りを回りながら話を続ける。新葉に考えさせる隙はなく、新葉はウサギの必死さに立ち尽くしていた。

「共鳴は僕が手助けをするから。色々教えるためにここにいるんだ。もしかしたら君が呪術を教わることで今の悩みを解決する突破口を見つけられるかもしれないよ」

ウサギは新葉の迷いに気づき、さらに大きな声で縋った。ウサギの出した言葉は新葉の心に不安と期待が入り混じさせるものだった。一輝の怪我は新葉の悩みであり、新葉は呪術のことを知った今でも一輝の怪我を無くす方法はないかと考えている。ただ、新葉が知ったことは呪術の基本中の基本のことだ。呪術を知っているのは一輝と陽嗣と目の前のウサギであり、その中の一輝と陽嗣は出会った時から約二年経とうとしているのに新葉に話してくれない。となると、新葉はウサギに頼るしかない。だが、新葉が考える前に答えを出していて、即決で答えを出したことに新葉は内心慌てた。これからの生活が一体どうなるのか全く予想がつかない状態であるが、目の前に現れたウサギは確実に人生に新たな変化をもたらす予感を漂わせていて、現在の状況を好転させたいと思う新葉は無意識に頷こうとしていた。

「…共鳴する方法は何なの?」

「共鳴をするのは本とこれの二つと契約をしてほしいんだ」

はっきり頷く前に新葉は共鳴のことをさらに詳しく聞こうとする。ウサギは満足そうに頷くと、手を上げ、本の表面から光が出て、光は棒の形状のものになり、新葉の手の上に降りた。新葉がおそるおそる握り締めると、丸い円の中に円がある形が上についている杖になった。新葉は杖を見て、魔法の杖だと思い、目を輝かせた。新葉の視線は杖から離れなかったが、杖の雰囲気に圧倒され、言葉がなかなか見つけられなかった。

「……杖ですよね。何だか神秘的なものを感じます…」

「この杖は僕が食べちゃった呪術の一部を取り出して、この形にしたんだ。君が持ちやすいものとして、一本の棒を出したけど、形は君が考えるイメージでこうなっているわけだよ。これで戦うことができるの?何か先についているけど、あまり攻撃に向いていない気がするんだけど…」

「…ごめんなさい。私は呪術で魔法に近いイメージを持っていて…それで……」

「まあ。別にいいよ。呪術はイメージだからイメージさえあれば使い方は色々あるからね」

新葉は手の中にある杖に目を奪われていると、ウサギが杖について説明する。だが、ウサギは杖の形になったことを不思議に思っているらしく、短い手を伸ばし、杖を撫でていた。新葉は光を見た時に魔法の杖みたいなものが出るのではないかと思っていて、ウサギから形になった自分のイメージだと聞き、謝罪してしまった。それと同時に魔法の杖になったことで何か不都合でもあるのかと思ったが、ウサギはあまり気にしていない様子だった。それより、続きを話そうとしているのが伝わった。

「その杖と契約を結んだら君は呪いを見ることができる。呪いは呪術を使う人間しか感知できないから契約を結び、君を呪いが感知できるようにする必要があるんだ。今は僕の力で僕の姿が見えているけど、それ以外は見えていないでしょ」

「だから…図書館では…」

ウサギの話を聞き、新葉は図書館での飛ぶウサギ達の姿を誰も気にしていなかったことを思い出し、納得する。呪術に関係することに関わるためには呪いを見る必要があるが、新葉は見えない人間である。呪いを見られるようにするというのは新葉にとって大きな利点だ。

「力を使っていることはあなたに負担がかかっているんじゃないの。確か本の力が失っているのならもう力を得ることはできないのでしょう」

「大丈夫だよ。この杖と契約を結ぶことは本や僕と契約を結ぶということにもなるんだ」

「なるほど…」

「契約は簡単だ。君がこの本に名前を書くだけだよ」

だが、新葉はウサギに負担がかかっているかどうかが気になった。新葉の言葉にウサギは一瞬呆気に取られたが、笑顔で答えた。そして、ウサギは本を新葉に渡した。新葉は杖を脇の下に挟み、本を両手で受け取り、見つめた。本の表紙のリボンのような部分には空白があり、名前を書くのがその場所だと言っているように光っていた。新葉には迷いがなかった。目の前のウサギと契約を結び、何をするのかを知らないが、新葉は筆箱からマーカーペンを出し、新葉、という字を大きく書いた。その瞬間、白い光で何も見えなくなったが、すぐに光は収まった。光のない本は朱色で古いものだということを表し、新葉の手の中に重みとともにあった。

「…これで「にいは」と読むのかな」

「ううん。「わかば」だよ。たまに「にいは」と呼ばれるけど、「わかば」と呼んでほしいの」

「分かった。それじゃあ。新葉(わかば)との契約は成立した。だから始めるよ」

「始めるって何を…」

横から覗き込むウサギに新葉は名前のことを言う。ウサギは特に気にした様子を見せず。目の前を見ていた。新葉はウサギの言葉に疑問を抱きながら目の前を見る。すると、鳥の形をした煙が見え、新葉は目を擦った。だが、目を開けると、今度は白い鳥がはっきり見え、新葉は口を開けた。

「今の本は力を失っている。だから力を取り戻すには新しい力となるものが必要なんだ。そういうわけで目の前の鳥の呪いと契約を結んできてほしいんだよ」

ウサギの話が開幕の合図なのかのように鳥の呪いは近くの木々を揺らすほどの声を上げた。






続きはまだ少し時間がかかります。気長に待ってくださるとありがたいです。



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