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転機1



最初の話で描いていた部分を加筆しました。よろしくお願いします。






新葉と一輝は義父と母親が残したお金で食い繋ぎ、生活を送ることになった。新葉と一輝は本の方にハマっていて、テレビを見ることは無くなり、テレビはコンセントから抜いた。ご飯は新葉が作ることになった。一輝と義父を二人にする時間を作っていた時、母親の手伝いをしていて、スーパーの特売と料理は分かっていた。他の料理を作る時は図書館から料理本を借りた。母親がいた時は短く切っていた黒髪は伸ばすことにし、縮むことのない黒いゴムを何重に巻き、一つに結んだ。新葉の様子を見て、一輝も何かしようと思ったらしく、新葉に色々聞くようになり、言葉数も増えた。

一輝と協力し、他のこともどうにかやりくりできるようになり、半年間は生活できた。だが、お金は増えることがなく、減っていった。新葉が小学生でもお金を稼げる方法を密かに図書館で調べ始めた時、一輝が学生服を着た男性を連れてきた。扉と同じだと感じるくらいに大きな男性は金髪に緑色の瞳であり、太陽に反射すると、眩しかった。

「冷蔵庫にないの!水って蛇口のじゃなくて、天然水って書いてあるのでしょ!」

「同じ水だろう」

「いーや!全然違うね!」

家に入り、出した水の入ったコップを見て、男性は一直線に台所に向かった。冷蔵庫を開けられ、新葉が手を中途半端に上げた状態で何も言えなくなっていると、一輝は呆れた声を出した。一輝はため息を吐き、立膝になっている新葉の肩に手を置き、座っているようにと伝えると、台所へ歩いていった。新葉は正座になり、騒がしい台所が落ち着くまで下を向いていた。足音が近づき、新葉が視線を上げると、札束を持った手が見えた。

「はい。お金はあげるから買ってきて」

男性の声が聞こえるが、新葉には札束の字の方が気になった。買い物でお金を使うが、新葉がよく持つのはゼロが三つあるだけだった。だが、目の前にあるのはゼロが四つだ。それも十枚以上重なっていた。新葉は頭の中が真っ白になり、男性の声が遠くなっていき、聞こえなくなっていった。いや。違った。新葉の様子に男性が気づいたのだ。

「ねえ!聞いている!」

「はい!この紙はお金ですか!使えるのですか!」

男性の声に反応し、新葉は声を上げた。何を言おうかと考えることもなく、新葉の喉から出た。新葉は自分の声が耳に届くと、首を横に振りながら言葉にし、説明しようとした。だが、その前に男性の笑い声が聞こえ、新葉は目の前が揺れているような感覚に襲われた。その後、男性の手により、外に出され、気づいた時には近くのスーパーにいた。新葉は両手でバッグを抱きしめながら頭の片隅にあった名前の水を購入し、バッグと一緒に体を押し付けるように抱え、スーパーを出た。家に着くと、疲れた顔をした一輝が迎えに来て、男性のことを紹介した。男性は陽嗣こうしという名前であり、今日から新葉と一輝の後見人をやってくれるそうだ。新葉は聞きたいことがあったが、ほとんどお金がなく、後見人ができることは有難いことであった。その上、陽嗣が振り込んだというお金はゼロが八つ並んでいて、新葉の頭が認識した瞬間、体が後ろに引っ張られた。一輝は目を大きくし、足音を立て、後見人となった陽嗣を呼び、大騒動になり、その日は質問どころでは無くなった。ただ、一輝に蹴られながら爆笑する陽嗣を見て、新葉は自分達の生活が変わることを確信した。

陽嗣という後見人ができ、新葉と一輝の生活は楽なものになった。お金の心配が無くなり、テレビを見られるようになった。しかし、その日から一輝は怪我をして、帰ってくるようになった。学校が終わると、一輝は陽嗣のところに行き、湿布や包帯だらけになって、帰ってくるようになった。新葉が最初に見た時、夕食の準備をしていることを忘れ、一輝に駆け寄った。

「一輝!どうしたの!そんなに怪我をして!」

「…見た目はこんなんだが、転んだだけだ」

「転んだ怪我には見えないよ!本当なの!誰かにやられたというわけじゃないよね!」

「だから平気だって」

新葉は目が熱くなり、溢れそうになるのを押さえようと声を張り上げる。一輝は新葉を見て、一度口を開けたが、ゆっくり閉じ、俯いた。新葉は小声で聞こえる言葉に首を横に振りながら一輝の怪我を確認しようと近づいた。だが、新葉が触れる前に一輝は避けるように通り過ぎ、一輝の部屋に戻った。その後も一輝の怪我は減ることがなく、新葉が声をかける前に一輝は部屋に行き、すれ違う生活になった。それならば一輝の外出前に止めようと思ったが、気が付けば一輝は家を出ていて、新葉は一人分の食器を片付けながら窓を見ることが多くなった。そして、新葉の帰りが遅く、夕食も遅れたある晩に一輝と陽嗣が一緒にいるのを窓から見つけた。新葉は途中だった洗い物をすぐに終わらせ、玄関の扉の前に向かった。すると、扉越しから陽嗣の声が聞こえてきて、新葉は聞き耳を立てた。

「今回は運が良かったけど、次は同じように行くとは限らないよ」

「今度は気をつけます」

「一輝。一輝はよく次は気をつけるとか言っているけど、本番ではそう言っていられないよ。まだ僕がいて、練習で弱いのを相手にしているのに怪我しているでしょ。このままだと死ぬよ」

新葉は死という言葉を聞き、心臓が止まった感覚がし、無意識に一歩下がっていた。だが、新葉の掌には心臓が脈打つのがはっきり分かった。新葉のことを知らない様子で陽嗣の話はまだ続いていた。

「別に俺がどうなっても構いませんが、援助してもらっているのでその分は動きますよ」

「えー。一輝の使う呪術は強力なのだからもっと強くなろうとしてよ。立派な術師になってほしくて、色々教えているのに」

「生活の援助をしていただけるのは有り難いです。そのため、敬語で話しているでしょう」

「いや。もっと敬意を持ってよ」

新葉の思考が動き出したのは呪術という言葉だった。新葉は呪術という言葉が耳に届いた時、聞き覚えがあると思った。新葉はその場に立ち尽くしていたが、頭の中は動き出し、記憶を遡っていた。しかし、答えに行き着く前にドアノブが動き始めたのを目が捉え、新葉は玄関から離れ、近くの部屋に入った。玄関の扉が開き、一輝の足音が新葉の入った部屋を通り過ぎ、足音は一輝の部屋へと消えていった。新葉は音が聞こえなくなったと感じ、大きく息を吐いた。

「呪術…」

新葉は声に出し、引っかかった言葉を再び耳にした。その時、視界に義父の物が入ってきて、新葉は両親の使っていた部屋に入ったことに気づいた。暗くなり、色は判別できないが、見覚えのある物なのは分かり、新葉は近づき、触れていった。埃の被った物が幾つかあり、洗面所からバケツと雑巾を持ってきて、埃を取り払っていった。その時、鈴の音が聞こえ、新葉は転がる音を追いかけ、鈴を掴んだ。掌に転がる鈴が隣の部屋から漏れる光に照らされ、黄金色が目に入ったと同時に新葉は思い出した。



ある夕食の前に義父が仕事道具を掃除している時のことだった。新葉は母親の手伝いをしていて、台所にいたが、一輝は義父の隣にいた。

「父さん。その鈴に何か入っているのか」

「あっ?…何も入ってねえよ」

「そうか」

新葉が箸や食器を持ち、台所から出た時、一輝が黄金色の鈴を指差し、義父に聞いた。義父の声はいつも通りに聞こえるが、一輝のことを見ていた。しかし、一輝は気づいていないようでテレビの方に視線を向き直った。新葉が箸や食器を机に置いている間も義父の視線は一輝に向けられていた。

「お父さん。どうしたの?」

「…何か見えるか」

「……ううん。何も見えないよ」

「そうか。なら別にいい。これも使わないモノだからな」

新葉は義父の様子が気になり、声をかけると、義父は新葉の前に鈴を出した。新葉は鈴を見つめるが、黄金色に輝いているだけの普通の鈴に首を傾げた。すると、義父は鈴を下ろした。新葉は聞きたいという気持ちが強くなったが、踏み込まず、母親の手伝いに戻ることにした。

「やっぱりこいつは持っているということか。もしかしたら呪術が使えるかもな。…こいつ以外は俺と同じ呪術の使えない奴だけになるし…どうするか」

耳に入った義父の声は悩んでいるというのが新葉に分かった。一度止まり、振り向くが、義父は新葉のことも一輝のことも見ずに手を動かしていた。



新葉は鈴を服のポケットに入れ、バケツと雑巾を洗面所に戻した後、一輝の部屋の前に行き、扉を軽く叩いた。一輝から返事はなく、新葉は息を大きく吸い、声を出そうとしたが、口から出る前に止まり、代わりに出たのはおかえり、といういつもの言葉だった。だが、一輝は何も言ってくれなかった。新葉は下を向きながら洗面所に行き、ポケットに入れた鈴を洗った。鈴に新葉の顔が映ったが、優れない表情をしているのが分かり、新葉が風呂に入り、歯磨きを終えても変わらなかった。





この後の一時間半後に投稿されるものも一話の加筆を詳しく描写したものになっています。そちらも読んでもらえると、ありがたいです。



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