8th world ~再度の崖~
辺りは荒野で隣にはガンさんが居た。握手を外し、
「無事、通れましたね。」
と言った。
「これが、フリック様の発明したゲートなのですね。ここはどんな星ですか?」
「ここは食べ物が育たなくて、嘘つきばかりの星です。でも知り合いが居るから、その人の家に行きましょう。」
「ええ、付いていきます。」
と、僕たちは小太郎さんの家へ向かった。
家の前に来た時、
「き、君は!」
と声が聞こえ、猛ダッシュで駆けつけ抱きしめてくる小太郎さんが居た。
「一周出来たんだね!良かった、ありがとう!」
「ええ、まあ…。」
「あれ、もう一人の彼、山田君じゃないな…前の世界の執事ロボットに似ているね。」
それまで僕しか見えてなかったのだろう。
「その通りです。執事ロボットのガンさん。」
「ガンさん?」
「この次の世界にフリックさんが居て、名前を教えてもらいました。」
「そうか、それは良かったね。フリックさんに会えるのか。」
「いえ、残念ながら次の世界は無くなってしまいました。」
「え?じゃあ、地球に戻れないのか?」
「ここのゲートは使えるはずです。ただ、出口が変わってしまうので、その先、どう行けば良いのかは分かりません。」
「そうか、残念。でも、ここの生活からは逃げられるってことだろ?よし、行こう。」
「決断早いですね。」
「いや、5年かかっているから。」
「確かに、そうですね。」
そう言って僕たちは、あの立て札のある崖に行った。
「この立て札は…飛び降りた所にゲートがあるのですか?」
初めてこの地に来たガンさんが立て札を見て、言った。
「そう。そして、おそらく、信じる、ということがこのゲートのキーです。」
「なるほど。君がここに居るってことは、ゲートとキーが合っているって事だから、私は100%信じるよ。」
小太郎さんがまっすぐな眼で僕の方を見た。
僕は崖から下を覗いた。一度飛んだとはいえ、とてつもない高さだ。あの時は、山田君が飛び、僕も行かなきゃと思っていたから、迷いがなかった。今はどうだろう。怖さの方が強いかな、と思っていると、ガンさんが
「行くなら、握手して同時に飛ぶ必要がありますね。」
と言った。
「そうですね。握手して、せーの、で飛びましょう。」
その方が迷わなくてすむ、そう自分に言い聞かせた。
でも、いざやろうとすると足がすくみ動かない。
「どうかしましたか?」
「いや、やっぱり怖くて、足が動かないです。」
「良いおまじないがあります。私のことをガンちゃんと呼んで下さい。」
「いや、なんで?呼べないですよ。」
「私のことをガンちゃんと呼べるのは、御主人様相当です。何があっても助けるようにプログラムされています。」
「ガ、ガンちゃん?」
「そうです。安心して下さい。私がそばにいる限り、キング様は何があっても死にません。」
「そ、そうですか?」
「はい、進んだ文明のロボットです。こんな崖へっちゃらです。私を信じて下さい。」
「確かにそうかな。分かった。これからはガンちゃんと呼ぶことにするよ。」
怖いけど、ガンちゃんを信じて今一度。
―――To the next world 再度の崖 完