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ブローディア


大切な何かを失ったとき、何がその出来事を昇華するのか。

もしあの時別の選択肢を選んでいたら、と思うこともある。

失ったものを取り戻そうとする鷹野優馬が、あがいた先にあるものは最後に残るのは絶望か希望かはたまた…

 

 僕は自分の生き方が間違っていたとは思わない。高校までは勉強もスポーツもある程度できていたし、大学も第一希望の大学に合格した。

 地元の宮城の片田舎から東京へ上京し、一人暮らしを始めて、大学に入ってからバイトをはじめ、実家からの仕送りと合わせて満足すぎる生活を送っていた。あの日まではーーーー

 大学二年の冬だった。そろそろダウン買わなきゃなと思いながらバイトから帰っているとき高校の友達から数年ぶりにメールが届いた。

「優馬ひさしぶり。今大丈夫?」

 高校の頃の同級生だった。高校を卒業してからは地元に帰った時に集まる地元の腐れ縁の集まりにたまにいる女の子というイメージくらいで、接点が薄くなっていった僕はなんだ?ねずみ講じゃないだろうなと思考が停止した。


「誰かと思った(笑)ひさしぶり、どうした?」

どんなテンションで話してたかも覚えていない結果、よくわからない情緒の文になってしまった。


「あのね、ゆずが亡くなったの。それでねおばさんが優馬にもお葬式に来てほしいらしくて・・・」

・・・は?

思考は停止していたと思ったのに、情緒はとうにどこかに行ってしまったと思っていたのに、その時その意味が真に分かった。さっきまで冬の風に当てられていたのに風がなくなって時間が止まった気がした。


「優馬さ、ゆずと付き合ってたじゃんか。だから時間とってほしいなって」

 僕が地元を出ると決め、柚葉は地元に残ることを決めた日まで僕たちは付き合っていた。僕は僕なりに彼女が寂しくなるくらいならと思っていたけど、あの日の彼女の普段出さない感情が表情からうかがえた気がした。迷いと寂しそうでと何か言いたそうな顔。僕が地元を出る日柚葉はみんなと一緒に見送りに来てくれた。こんな一生の別れみたいにすんなよと思っていたが、柚葉とは本当に一生の別れになってしまった。


「嘘言えよ。どうせ飛鳥が柚葉たちとドッキリしようとしてるんだろ(笑)」

なんだバレてるかって言えよ。言ってくれ。


「こんなひどい冗談するわけないじゃん。本当なの。」

明るい性格の飛鳥は、暗い話題や重たい話題の時メールでスタンプも絵文字も使わない。

つまり冗談じゃない。柚葉が死んだ。その現実が受け止められなくて、立ち尽くした。

「それで、葬式が無理でもお線香くらいはあげに行かないかなって。蒼士と一緒に」


「もちろんいくよ。日程決まったらすぐ教えて」

高校の時のようなOKのスタンプではなく、分かった。と送られてきたのを確認して、僕はどうしようもない思いをこぼれそうな涙を蛇口をひねるようにきつく締めて、駅前の雑踏を走り抜けた。







家族、彼氏・彼女、友達、時間など、得るのには多くの時間と感情を捧げたのに失ったときに残るのは絶望と悲壮感。この作品は、そんな感情のバイブルになればいいなと思っています。

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