95 山井達は居なくなった
僕は思わず悲鳴がした方向に走った。
途中目深にキャップを被った3人の男とすれ違った。
左手に不似合いなバッグを持った小柄な男。
間違いなく山井だった。
走り去る後ろ姿は黒田と江原に見えた。
取り敢えず悲鳴がした方向を目指すと50代前後と思われる女性が呆然とたたずんでいた。
「どうしました?」
と聞くとパートの帰り道に3人組の男にバッグをひったくられたと。
スマホも財布も家の鍵も何もかも入っていたのでどうしたら良いか分からずたたずんでいたそうだ。
僕は直ぐに110番に電話をし近くの交番に彼女と向った。
途中彼女がひったくられたバッグは濃い緑色で大き目の肩掛けバッグかと聞くとその通りだった。
交番に着くと彼女は色々聞かれていた。
僕は彼女のところに着く前に山井らしき男と黒田、江原の2人がひったくられたバッグところに同じ物を持って走り去ったと伝えた。
僕は警察官に連絡先を聞かれてからうちに帰った。
ネットニュースを見てもさすがにひったくりだと特にニュースにはなっていなかった。
けどねぇ。
いったいあいつ等の何してんの?
野球部終わりじゃないか。
僕の見間違え?
でも山井に見えたからなぁ。
その夜は佐季と電話したけど山井の話をしてすぐ切ってもらった。
目を閉じるとバッグを見たん持った男の顔が目に浮かぶ。
どう考えても山井だよな。
でも違ってたら?
僕の証言はウソになるけど野球部はなんとかなるのかな?
あれが本当に山井なら山崎とか2年生に最後の夏は来ないのかな?
黙ってた方が良かったのかな?
でもあれは山井にしか見えなかったし。
頭の中を同じ思考が延々とループした。
結局明け方まで眠れなかった。
一睡もせず朝日課のランニング。
眠たいけど走っているとやっぱり思考のループにハマった。
気づけばいつものランニングコースから逸れて学校まで来てた。
まだお盆休みのハズなのに学校に数台の車があった。
まぁ僕には関係ないないか。
と思い学校を後にしようとした。
また一台の車が学校に向かっていた。
その車が僕の前で急に止まった。
生徒指導の丸山先生だ。
僕は何も悪いことしてないよな?
あっ私服で登校って校則違反だっけ?
と考えていると
「鈴木 お前が山井達だと警察に言ってくれたんだってな。 取り敢えず乗れ。」
と車の窓を開けて言われ車に乗るように言われた。
「昨日妹を妹の友達のうちに送る帰りに女性の悲鳴がして」
「そこに向かう途中に山井と黒田と江原とすれ違ったのか?」
「山井らしき人と後ろ姿は黒田と江原みたいな人とすれ違ったと言いました。 まず間違いないと思ったんですが万が一を考えて。」
「どっちにせよお手柄だ。 奴らも今回捕まらないと2回3回と罪を重ねただろうし。」
「えっ 奴らは掴まったんですか?」
「山井の家で金を分けてたところに警察がな。 スマホや財布の中身が有ったから逃げようがなかったんだろ。」
「それは 野球部の方に追加で何か処分あったりしますか?」
「奴等は昨日の日付で退学届出したから野球部に追加のペナルティはない。 半年の対外試合停止で練習は出来る。」
「良かった。 山崎達に最後の夏の権利は残ったんですね。」
「それもこれも犯人逮捕の有力情報提供者が元野球部員だからさ。 お手柄だったな。」
「そんな 妹を送ったとは言え外出してはいけけない時間に外出していたし校則違反ですよ。」
「それはそうだがそのお陰で学校のイメージ低下も最低限で済んだ。」
「なるほど そこですか。」
「まぁ大人の事情だよ。 お前の名前は出せんが生徒が犯人を見たので逮捕に繋がったって話にはなるらしい。」
「らしいって。 先生らしいですけど。」
「俺は脳筋だから出世して書物に追いかけられるのはまっぴらだからな。」
「あっ 丸山先生、動作解析の件 ありがとうございました。 ためになりました。」
「なんだか新津が島井をベタベタ触ってたから怒ったんだってな。 近藤さんに聞いたよ。 すまんかったな。」
「あっそれは正義感ではなく単なるヤキモチなんで。」
「なんだよ あのミス学園捕まえたのか?」
「てか 幼馴染で小学校の頃はキャッチボールの相手でしたし。」
「お前は俺サイドの人間かと思ってたけど単なる勝ち組かよ。 うちまで送ってやろうと思ったけどやめようかな。」
「僕はランニングの途中だったのでどちらでも。」
「面白くないやつだな、お前は。 まぁうちまで送るよ。 俺は今学校に行きたくないし。」
「生活指導の先生が登校拒否って笑えませんよ。」
「うるせー。」
「あっここです下ろして下さい。 もう少しなんで走って帰ります。」
「そっか 改めてありがとな。」
数日して山井達は保護観察で済んだと街中のウワサになっていた。
しかし3人はそれぞれの親の田舎に子供だけで引っ越したらしい。
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