71 大切だから
腕枕をしながら逆の手は佐季と手を繋いでいた。
僕の手を握る手に力が入ってるから佐季もまだ眠れてないんだろう。
しばらくして佐季が口を開いた。
「ねぇ 隼平。」
「どうした?」
「もし もしもだよ。 私がインターハイ出るレベルの選手じゃなかったら・・・
いや なんでもない。」
「もしも佐季がインターハイ目指してない陸上楽しんでるとしても、多分まだ。」
「そっか。 でもなんで?」
「僕はずっと佐季が好きだ。 でも今は付き合い始めて好き以上に舞い上がってると言うかふわふわしてると言うか、普通じゃない気がするんだ。
もちろん嬉しくて幸せ過ぎてね。」
「あーっ なんとなく言いたいこと分かる気がする。
まだ何も言われてないけど。」
「多分当たってるんじゃないかな?」
「隼平っ大人だね。」
「大人でもないし、優しい訳でもないかも。
これが佐季じゃなく誰かに告白されてこの状況ならどうなっていたのか?」
「えつ? それってどういう意味?」
「僕のワガママ? 違うな、単に欲望をぶつけてそうってことかな。
相手のこと考えず、目の前のチャンスをつかめるなら先のことは知らねーみたいな。」
「って えへへっ つまりは私って大切にされてるんだ。」
「どうしたの? 今日はスゴい分かり合えてる気がする。」
「いつもは抜けててすいませんね。」
「凛として見えるのとのギャップが佐季の魅力だと思うんだけど。」
「それは褒めてないしーっ。」
「痛い 痛い 耳ひっぱらないで。」
「ごめんなさい。 てへっ。」
佐季は僕のほほにキスをするとニコニコしながら上を向いた。
「大切にされてるのかぁ。
ダメだ。 ニヤける。」
そう言いながら佐季は僕に背中を向けた。
「隼平。 ぎゅってして。」
耳まで真っ赤にして佐季は言った。
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