04 久々のキャッチボール
グラウンドに戻ると佐季は自分のヤリを持った。
「あっ肩慣らししないと。隼平って投手用と外野手用のグローブ持ってるよね?
久しぶりにキャッチボールしたいな。」
と佐季は言った。
佐季は小学校6年生まで僕と一緒に少年野球チームにいた。
テレビの高校野球を見ながらなんとなく2人で甲子園に行こうと約束もしていた。
中学校で中学も高校も野球部に女子が入れないことを知り佐季は陸上部に入ったのだった。
佐季とキャッチボールをするのは中学で野球部に入れないことを知った日以来だ。
あの日泣きながら投げてた佐季のボールは平均的男子より全然速かったのに。
「ありがとう、隼平。
頑張って甲子園に行ってね。」
そして僕は野球部に佐季は陸上部に入部した。
あまり思い出したくない思い出だった。
「ほら隼平、いくよ。」
少し離れて立ってる佐季はニコニコ顔だ。
大きく振りかぶるとあの日と同じで男子と遜色のない球を投げてくる。
「やり投げの練習で家ではシャドーピッチングしてるんだよ。」
投げ終わった佐季は胸をはっている。
「相変わらずよい球だ。」
僕は軽く投げた。
少しずつ距離をのばす。
もうバッテリー間くらいの距離だ。
佐季の球を受けるとパシッと乾いたグローブの音がする。
「このままキャッチボールしてたいかも。」
佐季は言った。
「やり投げ教えてくれるんだろ。」
僕は言った。
「仕方ないなぁ。」
名残惜しそうに佐季はやりを取りに行く。
「一度に投げるから見ててね。」
佐季は身体をひねりがら言うと、軽めの助走から力感のないフォームでヤリを投げる。
滑らかな放物線を描いてヤリが地面に刺さる。
30メートル近く飛んでいるだろうか。