03 用具倉庫と言う密室の2人
佐季に連れられて陸上部の部室に行った。
今日は佐季しか練習してないらしい。
「隼平がするならやり投げかな?
男子のやりって有ったかな?
女子のやりは私のために買ってくれたんだよね、学校。」
佐季は用具倉庫の鍵を取り出した。
「ここはコーンとかライン引きとかハードルしかなかったような。」
用具倉庫の鍵を開けながら佐季は言った。
用具倉庫の照明をつけると中は石灰で真っ白。
そんなに物を出し入れしてる雰囲気ではない。
「ここはね~。
ほとんど誰も来ないから二人きりになれるよ〜。」
からかうように佐季は言う。
こいつは昔から異性を意識してないのか?ガードが甘いのか?
小学校5年まで一緒の野球チームにいた時も隣で上半身はだかになって着替えてたのを思い出す。
えっ?僕が陸上部に入ったらまた佐季は僕の隣で着替えるのか?
イケナイ妄想が広がる。
あれ?でも普通部室は男子と女子が有るよね?野球部は男子しかいないから忘れてた。
「やっぱりないね。」
気づくと倉庫の中を探してた佐季が目の前に。
この至近距離!ってドキドキしそうになるけど佐季はホホやオデコは石灰で白くなってる。
真剣に探してくれてたんだなと思いながらも思わず笑ってしまった。
これだけ粉っぽいと二人きりでも何も起きないか。
残念なような安心なような。
「やっぱりやりないね。少し軽いけど女性用のヤリ投げてみる?」
僕は倉庫を出る佐季の後を歩く。