19 観覧車の中で
遊園地に入った。
それだけでテンション高くなった。
「最初は観覧車に乗るよ。」
手を繋いだまま佐季が走った。
入り口の混雑の割には人は多くない。
観覧車の列に並んだ。
「意外に高いね。」
「それは佐季のテンション?」
「観覧車に決まってでしょう。」
ふたりで観覧車に乗り込んだ。
「なにげにふたりきりだね。」
「密室でふたりきりとか、覚悟はよいかな?赤ずきんちゃん。」
「えっ?狼の皮を被った羊さんが何を言ってるの?」
「僕ってそんなに安心されてるの?」
「そんなに訳じゃないけど。危険ではないかな。」
ふざけてるともう半分近いところまで上った。
「どこで花火あがるのかな?隼平。」
「パンフレットによると遊園地外れのプールの奥みたいだよ。」
「あのウオータースライダーの方?」
「プールは早めに閉まって花火が上がるみたいだね。」
「今度はプールにも行きたいな。」
「あれ?佐季は泳げたっけ?」
「隼平は私の水着姿見たくないんだ。」
「謹んでお供させていただきます。」
「苦しゅうない。近うよれ。」
「はは〜。」
僕は佐季の隣りに座った。
腕を組んで見つめあう。
「本当に付き合ってるんだね。実感する。」
「何ならほっぺたつねってみる?」
「えっ?ほっぺならキスしてくれるんじゃなの?」
僕がふざけてると佐季の顔が近づいた。
「えっ?」
固まる僕の頬に佐季の唇が触れた。
「私の勝ち。」
「野球は後攻を抑えないと勝てません。」
僕も佐季の頬にキスをした。
改めて向き合うふたり。
でも視線は合わせられない。
「キス しちゃったね。」
「しちゃったね。」
観覧車のドアを係員さんが開けた。




