116 佐季子サイド バスの中
私は隼平に八つ当たりのように
「才能ある人は・・・」
みたいなことを言った。
それからの記憶は怪しいが帰りのバスに乗っていた。
後ろの席の魚田さんや西部さんに私の最期の跳躍や隼平の最後の投てきの様子を聞いた。
私の最後の跳躍の後の姿を見て隼平も冷静ではなくなってたのかもしてなかった。
なんで私は同じミスを繰り返すの?
なんで私は隼平にあんな八つ当たりをしたの?
なんで隼平はこのバスにいないの?
色々な考えが頭の中をグルグル回るが答えは見つからなかった。
朝会場に向う時は私の隣には隼平がいた。
でも帰り道の今は隼平はバスの中にさえいなかった。
私があんなことを言ったから?
考えもこの後どうして良いかも分からなかった。
私はなんとなく窓の外の景色を眺めていた。
「残念だったね。」
声をかけられて振り向くと友添君が隣に座っていた。
「友添君はどうだったの?」
「俺も予選敗退 短距離は競争率もレベルも高いから大変だよね。」
「うん。」
「そう言えば鈴木君はどうしたの?」
「ちょっと 私がヒドいこと言っちゃって。」
「でも帰りのバスにいないとか。 団体行動が出来ないヤツだな。」
「隼平は野球してたし人に合わせてくれる人だよ。」
「でもいないじゃん。 それに野球がダメで隙間産業みたいなやり投げに転向とか。 全国3位とか言ってもしょせんやり投げだし。」
「そんな 初めての全国大会で3位とか立派だよ。」
「短距離とやり投げじゃ比較にならないでしょ。 島井さんは短距離同士俺と仲良くやろうよ。」
と言うと友添君は私の肩に手を回してきた。
「ちょっと何してるのよ?」
魚田さんと西部さんが言っていた。
「パシーンッ」
その声を聞き終わる前に私は友添君の頬を張っていた。
「いてっ 何するんだよ。」
友添君は声を荒らげた。
「どうした?」
引率の先生の声がした。その声は私にはとても遠くからの声に聞こえた。
「島井さんにぶたれました。」
友添君が先生に言っていた。
直ぐ隣にいるのにその声もとても遠くに聞こえた。
「友添君がいきなり島井さんの肩に手を回したんです。」
魚田さんと西部さんが言った。
「セクハラですよ。」
「私も見た。」
「肩に手を回すとか何様?」
女性陣が騒ぎ出した。
「友添 お前は本当に肩に手を回したのか?」
「島井さんがぼーっとしてたので肩をトントンと。」
「ウソだね。」
「肩に手を回して仲良くしようよとか言ってたじゃん。」
「落ち込んでる女の子につけ入ろうとするとかサイテー。」
辛辣な声が上がって友添君は私の隣から席を移した。
「友添 ホテルに着いたら俺の部屋に来い。」
先生の声がバスの中に響いた。
続けて
「島井 大丈夫か? すまんな」
「大丈夫です。 でもホテルに帰ったら直ぐ部屋で休んで良いですか?」
「おー 何かあったら明日でも聞くから。」
「すいません。 ありがとうございます。」
そう言うと私は友添君をぶった私の手を見た。
私がぶったのに私の手も痛かった。
私がヒドい言葉を投げ掛けた隼平の心はもっと痛かったのかな?
不意に私は涙を流していた。
隼平に謝らないと。
でも隼平はどこ?
ホテルのフロントで待っていたら帰ってくる?
どうしたら良いか分からない。
私はなんて言葉を隼平に言ってしまったのだろう。
早く隼平に会いたい。
会って謝らなくっちゃっと思った。バスから見える窓の景色はどんどん流れていった。
でも時計の時間は全然進まない気がした。
どこにいるの?隼平
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