01ノーコンピッチャークビを宣告される
「お前はクビだ。」
それは新チームになって練習試合を2試合終えた後の出来事だった。
2試合ともに投げた僕は肩をクールダウンしたまま荷物を片付けていた。
後ろから副キャプテンとキャッチャーに声をかけられた。
振り向くと二人とも厳しい視線を投げかけていた。
「いったいいくつフォアボール出すつもりなんだ。」
「野球はリズムだ。あんな投球じゃ攻撃に集中できるだけバスもない。」
二人は続けざまに言い放つ。
「それは投手失格ってこと?」
「野球部自体クビだ。お前みたいなノーコンに練習されたらブルペンが危なくて仕方ない。」
指にテーピングしているキャッチャーがその手でベンチの壁を叩きながら言った。
「野球部まで?投手失格でも野手として残れないのか?」
「お前は球だけは速い。あれを知ってるとまた投手でって話が出てきての堂々巡りだ。」
副キャプテンが言った。
確かに僕はこの1年数ヶ月で4度投手をクビになっては4度とも投手に復帰した。
「フォアボールならまだよい。練習試合で相手の主軸にデッドボール連続とか連続相手がいなくなる。」
副キャプテンが言うと残りのチームメイトも
「中学の同級生がいる高校に練習試合申し込んんだけど、この辺じゃ要注意ピッチャーがいるから無理と言われた。」
とか
「アイツが投げないなら考えなくもないと言われた。」
との声が聞こえた。
チームメイトを見ると1番後ろで笑いをこらえてる僕のライバルの投手候補がいた。
そう言うことなのか?
そう言えばヤツの父親は野球部の後援会長で何かにつけ差し入れ持ってきてたな。
僕がいなくなればヤツがエース候補一番手で気分良い後援会長様の差し入れも増えそうってチームの総意なのか。
「今までありがとうよ。退部届は休み明けでよいか?」
僕は二人に視線を向けずに言った。
「ところで。」
しばしの沈黙の後に副キャプテンが口を開く。
「もうアイシング要らないだろ?」