厄介さでは負けず劣らず
エドナそっくりの怪物は、いかにも死角の多そうな図体をしていながら、どうやってかは知らねえがきちんと死角はなくしていて、しかも見た目の印象よりもずっと身軽だった。
力だけなら恐竜怪人の方が確実に上だったし、頑丈さでも向こうが上だろうよ。でもな、厄介さでは負けず劣らずってえ感じだな。
特に、上を取られたのはいただけねえ。
六本の脚で器用に木の枝に乗ってやがる。俺もカマキリ怪人程度には木の上でも動けるけどよ、踏ん張りがきかねえのはやっぱきついよな。攻撃の威力がどうしたって落ちちまう。
俺がそんなことを考えてる間にもこいつは木の上から飛びかかってきやがった。
それに合わせて腹の下に潜り込んでみたけどよ、脚を杭みてえに正確に俺に打ち込んで来やがった。
間違いねえ。こいつは腹の下も完全に見えてやがる。死角がねえ。
でよ、攻撃を躱して本体のどてっ腹に崩拳を食らわしてやろうとしたら、また木の上に跳び上がって間合いを取りやがった。
本当に強えなこいつ。
言ってみりゃ起き抜けみてえな状態のはずだぞ? それでこの動きができるってなあ、マジでとんでもねえ。
かと思ったらジャックの方はピクリとも動かねえ。あいつは俺と同じ軍からの出向組で、それなりの腕も持つ軍人だったはずだ。それがこの騒ぎにまったく反応もしねえってのは、さすがにマズいんじゃねえか?
そうは言ってもこっちも余裕なんざまったくねえ。ジャックを助けようとして二人とも殺されちまっちゃ意味ねえんだよ。
それよりゃこの怪物をぶちのめして、ぶちのめせねえまでもなんとか追っ払ってそれから救助にあたるってのがまともってもんだろ。
なら、とにかく急いでこいつをなんとかしねえとなあ!
上を取られたままじゃあ埒が明かねえ。それにここまで見たところ、こいつの、<エドナそっくりの部分>は、昆虫で言やあ<頭>だろ。頭の部分が人間そっくりに擬態してるってえヤツだろうな。だから<エドナの手足>に見える部分はやっぱ<触角>だろ。
しかもその触角は、攻撃をさばいた時の感触からすると人間と大して変わらねえ。てか、『人間そのもの』だった。
てえこたあ、頭を潰しゃ、生き物である限りは終わるだろ。たぶん。
だから俺も、跳び上がって枝に掴まり、さらに上に位置した。
そうしたらエドナそっくりの怪物もさらに上に上がろうとしやがったんだけどよ、上の方の細い木の枝じゃあ、さすがに体を支えきれなかったみてえで、太い木の枝があるところまでずり落ちやがった。
やっぱさすがに俺よりは重いよなあ。




