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命の使い方

川に何があるのか確認したいというのは、単純に俺自身の好奇心というのもあるのは事実だけどよ、それに加えて、行道(ゆきみち)のためにどんな危険があるのかってのを、親として確かめておきてえっていうのも正直な気持ちなんだよな。


行道(ゆきみち)がもう俺がいなくても生きていけそうだってえのもある。俺に万が一があっても大丈夫だってえんなら、俺の役目は、自分の命をどう活かすかだろ?


別に蟷姫(とうき)を亡くしたからって自棄になってるわけじゃねえぜ? もしかしたらまた彼女みてえに愛せる相手が見付かるかもしれねえ。そういう可能性を否定してるわけじゃねえよ。


けどな、それ以上に今は行道(ゆきみち)のために自分を使いてえんだよ。


幸いここじゃ余計なお節介を焼いてくる奴もいねえ。


『命を粗末にするな』


みてえなことを言ってくる奴もいねえ。


そういう奴も悪気はねえんだろうけどよ、そういう奴にゃ分からねえんだろうけどよ、俺は別に命を粗末にするつもりはねえんだ。


<命の使い方>ってえもんを考えてえだけだ。格好つけたいわけでもねえ。


だから俺は、川の方に向かって歩き出した。行道(ゆきみち)もついてくる。それでこいつまで危険に曝しちゃ意味ねえから、ずっとついて来ようとするんなら、そこで止めようと思った。


で、この日はついて来ようとすっから縄張りの少し外に出た辺りで止めておいた。こうやってついて来ようとするってことは、行道(ゆきみち)がまだ俺を必要としてるっていう事だろうからな。それがもうついて来ねえようになったら、いよいよ俺は御役御免てこったろ。


そう考えて、何度も何度も川の方へ向かっては止めるってのを繰り返していた。するとよ、気が付いたんだよ。ある程度まで川に付くと行道(ゆきみち)が必ず立ち止まって、怪訝そうに俺を見るんだ。


それが本能的なものかどうかまでは分からねえが、川の方に行くことをためらってるのは間違いねえだろうなってえ印象だった。


それでも俺が川の方に向かって歩こうとすると、渋々ついてくる感じだったぜ。


しかもそうやって立ち止まってる時間が日を追うごとに長くなってくる。


そうすると俺に構ってもらおうと挑み掛かってくる回数も減っていった。


まあ、だからってそのまますんなりとは行かなかったけどな。


しばらく俺に挑みかかったりしねえと思ったら、また続けて挑みかかるようになったりと、行ったり来たりを繰り返す感じだったぜ。


これも、子供にはよく見られる反応らしいってのは俺も知ってたからよ。焦る必要もねえ。急がなきゃいけねえ目的でもねえしな。



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