親の最後の役目
白ウサギのコスプレザルを容赦なく屠る行道に、俺は、頼もしさを感じちまったよ。こいつは間違いなくカマキリ怪人として真っ当に生きていける。改めてそれを実感できた。
同時に、<親の最後の役目>なんてのはこういうもんだってのもしっかりと実感したぜ。親が溜め込んだ資産を子供が相続するってのも、結局はそういうことだろ?
親世代は子世代の糧になるのが本来の在り方ってえもんだ。
まあそうは言っても人間社会にゃ<人権>ってえ金科玉条があるからな。そこまで単純でもねえけどよ。それに、老化抑制処置のおかげで健康寿命が百五十年だか百七十年だかになってっから、早めに生んでりゃ、子供が成人してからでも百年以上好き勝手にてめえの人生を楽しめる。そうそうくたばっちゃくれねえし、くたばってやろうなんてえ奴もいねえ。
老化抑制処置の効果が切れてからだったらまあ三十年とかしかねえし、健康に働ける百五十年で三十年遊んで暮らせるだけの貯えつくっときゃいいしよ。社会の足を引っ張るってえのもあんまねえらしいけどな。
けどな、ここじゃ<貯え>なんてえもんをそもそも作れねえ。餌を貯め込むこともできねえし。
もっとも、行道にゃそんな話は関係ねえ。ビクビク痙攣してる白ウサギのコスプレザルの年寄りの肉をがつがつと食ってやがった。
この<当たり前>を受け入れられねえならここじゃ生きていけねえよなあ。
んでもって、俺自身はそれを受け入れちまってるのも感じるぜ。なんかすっきりした気分だ。
カマキリ怪人にとっちゃ<白ウサギのコスプレザル>は、れっきとした獲物だ。行道はちゃんとそれを分かってくれてる。俺はまだ食う気にゃなれねえが、そこはまあ食わねえでも今のところは問題ねえしな。
それにここは食うものにゃ困らねえ場所だ。やべえ獣相手に勝つか、勝てねえ相手からは確実に逃げられる力がありゃあ、割と悪くねえ世界だと思うぜ。
その中で行道はしっかり生きてってくれるだろ。この様子ならな。
それもあってか俺としては、ずっと引っかかってたことを少し確かめてみてえってえのが頭をもたげてきちまった。
川だ。あの川にゃ何かある。それは間違いねえ。あれからも川の近くまでは行ってみたんだけどよ、やっぱ獣の数が明らかに減るんだよ。川にも獣や魚はいるけどよ。密林に住んでる獣は、川に近付けば近付くほど姿を見なくなる。
気のせいなんかじゃねえ。白ウサギのコスプレザルもよ、子供が川の方へ行こうとすると親がすっ飛んできてとっ捕まえて川から離れるんだよ。
これは何かあるってえ考える方が自然だろ。




