俺のそういう拘りは
行道は、しっかりとした<カマキリ怪人>だった。俺の資質を受け継いでいても、その点は間違いない。
人間の世界で生きるにゃあ問題かもしれねえけどよ、ここで生きるにゃむしろそうじゃねえとつらいだろ。普通の人間は野生の世界じゃ生きられねえ。俺みてえに頭がおかしい奴でなきゃな。
いくら親子でも親と子供が完全に同じになるわけじゃねえのは俺にだって分かる。何しろ俺自身が、俺の両親とはまったく違うからな。
当たり前だろ?
だから行道も俺と違ってて当たり前なんだよ。
俺は、<白ウサギのコスプレザル>までは獲物としちゃあ狙わねえが、行道には俺のそういう拘りはまったく関係ねえ。
いつもみてえに行道が気配を殺して木と一体化して獲物を待ち受けてたらよ、白ウサギのコスプレザルの群れが近付いてきたんだよ。
『ああ、ヤベえなあ』
とは思ったけどよ、そこで俺が邪魔するわけにもいかねえしな。まっとうに生きようとしてる子供の足を親が引っ張っちゃいけねえだろ。
だから黙って見てた。
でもまあ、あいつらの方もこの野生で生きてる連中だ。ただ黙って狩られちゃあくれねえよな。
「ぎゃあっっ!!」
一匹が行道に気付いて声を上げたんだよ。
白ウサギのコスプレザルも、当然、天敵に対する備えはしてるよな。群れの中でも勘のいい奴を警戒役にしてるんだろ。
その瞬間に、群れ全体が弾かれたみてえに逃げ出した。
カマキリ怪人相手にゃ、まったく敵わねえ。それを承知してっから、とにかく逃げの一手だ。戦うことがあるとすりゃあ、そりゃあもう、逃げることもできねえってなった時だろうよ。逃げられねえなら一か八かってえことだな。
けどな、『逃げられねえ』ってのは、だいたい、ガキか年寄りだ。それでも、ガキはまあ親が守ってくれる。小せえのはそれこそ親が抱いて逃げるし、そうじゃなくても先に逃がしてくれる。
そうやって守ってもらえねえのは、群れでイジメの対象になってる奴か、年寄りだな。しかも、イジメの対象になってる奴はまだだいたい若えから、逃げ遅れるのは年寄りが多い。
つまりそれが年寄りの役目だ。逃げ遅れて天敵に狩られることで結果として群れを守る。そのために群れに置いててもらえる。
人間みてえに、『親を敬う』だの『お年寄りを敬う』だの、眠てえことは言わねえ。そういう形で最後の役目を果たすためにいるんだってえことだな。
この時も、逃げ遅れたのは間違いなく年寄りだった。誰かの親だろうさ。なのに誰も助けようとしねえ。
そのためにいるんだってのがよく分かるぜ。




