改めて腑に落ちたぜ
そうやって行道の相手をしていると、俺自身、気が紛れるのを感じる。蟷姫を亡くしたことを気にしてばかりもいられねえ。
ただ、一応、様子も見に行ってみたけどな。縄張りの見回りもそも兼ねてよ。
そしたら、恐竜怪人の死体と合わせて、他の獣や虫に食い荒らされてた。彼女のボディアーマーみてえな皮膚の部分は大体そのままだったもんの、関節とかのどうしても柔らけえ部分は食い破られてそこから小せえ獣や虫が中にまで入り込んで食ってたみてえだな。
まったく、逞しい奴らだ。
そんな感じで他の生き物の糧になっていく彼女を見てよ、
『ああ……これがここじゃ当たり前なんだな……』
改めて腑に落ちたぜ。彼女の命は行道に繋がって、その上でこうやって他の生き物の命にもなっていく。
蟷姫……愛してるぜ……
過去形じゃねえ。現在進行形で俺は蟷姫を愛してる。彼女と出逢って番って麻沙美と行道を生して、それがたまらなく嬉しいんだ。
そう思ったらよ、やっと涙が込み上げてきたんだよな。ボロボロに泣いたりまではしねえが、胸がよお……締め付けられるんだ。
畜生……
俺は、自分の気持ちを気の利いた言葉にして表現するとかできねえからよ。こんくらいで勘弁しといてくれや。
一ヶ月ほどしたら指もだいたい治った。傷の治りも早えんだ、俺は。たださすがに、きちんと治療を受けなかったからか、折れた指は結構曲がっちまってた。
けど、構わねえ。細けえ作業をするんでもなきゃこれでも別に困らねえし。治る前でも、指が三本も使えりゃ登るのにも問題なかった。体を支えるだけなら一本でもいけるしな。
獲物を狩るのは蹴りだけでいけた。手はバランスを取るだけで間に合う。まあ、締め技が自由に使えなかったのは厳しかったが、それも何とか凌げた。
で、手が使えるようになったらそれこそどうにもなる。
正直、行道に対しても教えることなんざロクにねえ。カマも育って棘が鋭くなってくると、小せえ生き物を捕まえるにゃそれこそ大活躍だ。棘に引っ掛けりゃ動きを封じられるしよ。
今も、
「……」
気配を消して木と一体化して、目の前を通りがかった鳥を一瞬で捕えやがった。その姿がこれまた蟷姫にそっくりで、笑うしかねえ。
「すげえな。行道」
「……」
俺はそうやって話し掛けるが、しゃべったりはしなかった。どうやら口から喉にかけての構造が人間と違ってて、人間みてえなしゃべり方は元々できねえみてえなんだよ。
ま、それについちゃ蟷姫もそうだったから別にいいんだけどよ。




