立派になるのを見届けたかった
俺と同じ透明な体を持った恐竜怪人は、明らかに蟷姫と行道をロックオンしてた。
それを察した瞬間に俺の体が動いて、全く用車のねえ崩拳をそいつの腹に叩き込む。
「ガッッ!?」
突然現れた奴に一撃を喰らわされ、透明な恐竜怪人もこれにはさすがに驚いた様子だった。
だってえのに、手応えは十分だってのに、恐竜怪人はまるで怯んだ様子も見せねえで、俺の頭なんか確実に一かじりで食ってしまえるでけえ口で喰らいついてきやがった。
なんか、技とかで防ぐとかじゃ話にならねえのが分かったぜ。ギリギリで躱そうとかも無駄だ。間違いなくそれに合わせて軌道を変えてくるのが察せられちまった。全力で間合いの外に逃げるしかねえ。
小便も糞も盛大に漏らしそうになりつつ、
『逃げろ逃げろ逃げろおお~っっ!!』
俺はそれだけが頭にあった。正直、間に合うかどうか全く分からねえ状態だった。間に合わなけりゃ頭を食われてそこでおしまいだ。
麻沙美をあんな風にして死なせちまった俺には相応しい最後かもしれねえけどよ、せめて行道が立派になるのを見届けたかったってえのは、本音だな。
走馬灯ってえわけじゃねえのかもしれねえにしても、そんなことを考えちまったその時、
「!?」
恐竜怪人の頭が弾かれるみてえにして軌道がずれるのが分かった。もう俺の頭に届かねえのを感じてホッとした視界に飛び込んでくる影。
『蟷姫!?』
ああ、そうだ。蟷姫だ。彼女がロケットみてえに吹っ飛んできて、恐竜怪人の頭を蹴り飛ばしたんだよ。そのおかげで助かった。
だが、蟷姫の容赦のねえ飛び蹴りを食らったってのに、恐竜怪人は今度は彼女に狙いをつけやがった。着地しようとした彼女に頭を向けたのが分かる。
なら、俺も黙って見てるわけにゃいかねえなあ!
逃げようとしていた勢いをそのまま体の回転に活かして、一切手加減のねえ掌打を恐竜怪人の頭に叩きつける。
するとまた俺に狙いを付けてきやがって、今度は着地した蟷姫がすかさず蹴りを放つ。
俺が近付こうとしたら歯を剥き出して威嚇してたってのに、助けてはくれるんだな。
まったく……!!
「愛してるぜえ!! 蟷姫ぃ!!」
思わずそう叫んじまった。叫びながら、また彼女に狙いをつけた恐竜怪人の頭に全力の掌打。
で、俺に狙いをつけると蟷姫が蹴る。
自分で言うのもなんだが、すげえ息の合った連携プレーだったぜ。
しかもそこに、また影が一つ飛び込んでくる。
「行道!?」
そうだ。行道だった。俺と蟷姫の攻撃に合わせて、行道が、小せえ体を活かして恐竜怪人の死角から蹴りを食らわしてんだ。
マジか!?
見た目は三歳くれえにも見えるけどよ、実際にはまだ一歳を過ぎただけのはずだぞ?




