ここの川には何かある
『ここの川には何かある』
はっきりした根拠はねえが、ほとんど確証みてえな感覚は確かにあるんだよ。ヤベえ何かがあるってのはな。
その辺りに特大の雷が落ちた。
それからずっと尻が収まらねえ。腰を落ち着けようって気になれねえ。しかもよ、密林の中もなんかざわざわしてやがんだ。
「ぎゃーっ!」
「ぎゃうあーっ!!」
<白ウサギのコスプレザル>もやけに騒いでやがる。もしかしたら俺が感じてるのと同じのを察知してるのかもしれねえな。
「……」
しかも、蟷姫も行道を抱いて川の方に視線を向けてた。するとよ、なんか、彼女が見てる先に得体のしれねえ<熱気>のような<寒気>のような、どっちとも言えねえしどっちにも感じられる<何かの塊>があるのを俺も察しちまった。
肌がビリビリと痺れるぜ。こんなヤベえ感覚は初めてだ。
蟷姫と行道を守ろうと、俺は二人に近付いていった。これまでだったら蟷姫がまったく俺を寄せ付けねえ気配を発してたってえのに、今はそれどころじゃねえみてえな様子で、俺の方には意識も向けねえ。
まあ、俺もそれあ分かるけどよ。確かにこの気配はそれどころじゃねえよな。逃げた方がいい気もするもんの、蟷姫としちゃあ自分の縄張りに得体のしれねえのが入り込んできたってえことになりゃ、何もしねえで逃げるってえわけにゃいかねえよな。
ああでも、勝てねえ相手からは逃げるってのは野生じゃ当たり前か。逃げられねえ逃げたら後がねえとなりゃ一か八かに出るってだけで。
だが今回のも、確かにヤベえ気配はするぜ。逃げてどうにかなりそうな気がしねえんだよ。
てなことを思ってたらよ、
「……恐竜……?」
密林の中に影が見えた瞬間、そう思っちまった。けどまあ、ヴェロキラプトルみてえな獣やイノシシみてえな獣も恐竜っぽい奴だったから、ここの獣にゃそういうのが多いのかもしれねえが、
「恐竜にしちゃ小せえ……? けど、何だこいつ……」
思わず口に出ちまった。
そいつは、頭までが二メートルくれえで、しかも透明だったんだよ。俺と同じで。
だから恐竜としてみりゃあ、T-REXみてえなのを想像すりゃあ、かなり小せえんだけどよ、
『でもよお……こいつはヤベえだろ……』
正直、小便ちびりそうだったぜ。それこそ本物のT-REX相手じゃ小便も糞もちびり放題だなんての当たり前なんだろうけどよ、このサイズでこの感じってのは……
ここに来るまでだけでかなり食ってきたんだろうよ。頭は血塗れで、体は透明だからよ。食ったもんが腹に溜まってるのが見えるんだよな。
恐竜を無理に人間に似せて作ったみてえなそいつの腹によ。




