表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/106

ホッとした気分になりつつ

「……」


生まれた子供がちゃんとカマキリ怪人だったってのを直感した俺は、ホッとした気分になりつつ、静かに引き返していった。ここで俺が邪魔したら、それこそ母猫が子猫を食っちまうみたいにして赤ん坊を殺しちまうかもしれないと感じたからな。


そうして仮の巣に戻り、様子を窺うことにした。


したらよ、次の朝にはもう、蟷姫(とうき)が赤ん坊を連れて巣から出てきたんだ。彼女の胸には、小せえカマキリ怪人ががっちりとしがみついてやがった。元々そういう形だったみてえに違和感ねえ。これはあれだな。体がそういう構造になってんだな。人間みてえに<抱っこ紐>とか使わねえでも赤ん坊の力だけで母親の胸にしがみついてられるってことか。


すげえもんだ。


とか感心しながら俺は距離を取りつつ蟷姫(とうき)と赤ん坊のあとをついていった。


蟷姫(とうき)もさすがに昨日の今日で遠出はしねえで、近場でネズミみてえな獣やトカゲみてえな獣を狩ってバリバリ食った。


赤ん坊は赤ん坊で、勝手に乳に吸い付いてる。まあそうでなきゃこんな野生の世界じゃ母親と子供だけで生きちゃいられねえか。人間の赤ん坊が自力じゃ何もできねえのに生きてられるのは、人間同士が集まって守りを固めてるからだしな。


それこそ道理ってもんだ。


けど、二人目がちゃんとカマキリ怪人でよかったぜ。


で、俺は、その子のことを勝手に、


行道(ゆきみち)


って呼ぶことにした。麻沙美の時と同じではっきりした意味はねえ。俺の名前から連想しただけのもんだ。けど、


『カマキリ怪人として道を真っ当に行ってくれればなあ』


とは、後で思ったりもしたよ。


それになあ、蟷姫(とうき)にちゃんと子供を残せてやったのが嬉しかった。俺なんかと一緒になったばっかりにまともに子供も残せねえってなったら後味悪りいじゃねえか。


人間なら子供を作ろうが作らまいが関係ねえだろうけどよ。蟷姫(とうき)達はそうじゃねえだろ。人間の勝手な理屈を押し付けるなんざ、道理に合わねえ。


って、だったら初めっから彼女と付き合うな!ってえことかもしれねえけどよ。


ははは! 違えねえ!


けどな、その分の責任は果たすつもりだぜ。


子供を育てるのは彼女も手伝ってもらおうと思ってねえみてえだが、陰ながら守らせてもらうさ。


そのついでに行道(ゆきみち)の成長についても見守らせてもらおう。




そうしたらまあ、俺も人間の赤ん坊を育てたことがあるわけじゃねえからよくは分からねえけどよ、なんかすげえ勢いで成長してる気はしたぜ。


当たり前か。人間と違ってさっさと成長しねえと死ぬ確率がそれだけ高くなるだろうからな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ