ホッとした気分になりつつ
「……」
生まれた子供がちゃんとカマキリ怪人だったってのを直感した俺は、ホッとした気分になりつつ、静かに引き返していった。ここで俺が邪魔したら、それこそ母猫が子猫を食っちまうみたいにして赤ん坊を殺しちまうかもしれないと感じたからな。
そうして仮の巣に戻り、様子を窺うことにした。
したらよ、次の朝にはもう、蟷姫が赤ん坊を連れて巣から出てきたんだ。彼女の胸には、小せえカマキリ怪人ががっちりとしがみついてやがった。元々そういう形だったみてえに違和感ねえ。これはあれだな。体がそういう構造になってんだな。人間みてえに<抱っこ紐>とか使わねえでも赤ん坊の力だけで母親の胸にしがみついてられるってことか。
すげえもんだ。
とか感心しながら俺は距離を取りつつ蟷姫と赤ん坊のあとをついていった。
蟷姫もさすがに昨日の今日で遠出はしねえで、近場でネズミみてえな獣やトカゲみてえな獣を狩ってバリバリ食った。
赤ん坊は赤ん坊で、勝手に乳に吸い付いてる。まあそうでなきゃこんな野生の世界じゃ母親と子供だけで生きちゃいられねえか。人間の赤ん坊が自力じゃ何もできねえのに生きてられるのは、人間同士が集まって守りを固めてるからだしな。
それこそ道理ってもんだ。
けど、二人目がちゃんとカマキリ怪人でよかったぜ。
で、俺は、その子のことを勝手に、
<行道>
って呼ぶことにした。麻沙美の時と同じではっきりした意味はねえ。俺の名前から連想しただけのもんだ。けど、
『カマキリ怪人として道を真っ当に行ってくれればなあ』
とは、後で思ったりもしたよ。
それになあ、蟷姫にちゃんと子供を残せてやったのが嬉しかった。俺なんかと一緒になったばっかりにまともに子供も残せねえってなったら後味悪りいじゃねえか。
人間なら子供を作ろうが作らまいが関係ねえだろうけどよ。蟷姫達はそうじゃねえだろ。人間の勝手な理屈を押し付けるなんざ、道理に合わねえ。
って、だったら初めっから彼女と付き合うな!ってえことかもしれねえけどよ。
ははは! 違えねえ!
けどな、その分の責任は果たすつもりだぜ。
子供を育てるのは彼女も手伝ってもらおうと思ってねえみてえだが、陰ながら守らせてもらうさ。
そのついでに行道の成長についても見守らせてもらおう。
そうしたらまあ、俺も人間の赤ん坊を育てたことがあるわけじゃねえからよくは分からねえけどよ、なんかすげえ勢いで成長してる気はしたぜ。
当たり前か。人間と違ってさっさと成長しねえと死ぬ確率がそれだけ高くなるだろうからな。




