こりゃダメかもしれねえ
仲間の三分の一をやられても引き下がらねえヴェロキラプトルみてえな獣は、それこそ一斉に、イノシンみてえな獣の首や背中や足に食らいついて鈴なりになる。以前はこの感じでいけたどよ。今回はどうだ?
あ~……いけそうな感じがまったくしねえな。ウェイト的に六匹合わせてやっと互角ってえ印象か。こりゃダメかもしれねえ。
俺もそう感じたとおり、イノシンみてえな獣は、そいつらを体にたからせたまま猛烈に暴れ出して、木の幹に体当たりをかましたりした。そのたびに挟まれた奴が悲鳴をあげながら振り落とされる。
そして、地面に落ちた奴の頭にイノシンみてえな獣が思いっきり噛み付くと、
「ボリンッッ!!」
ってえ音がして、頭の骨ごと噛み砕かれたのが分かった。いやいや、言ってもちょっとした大型犬くらいのでかさがある獣の頭の骨を噛み砕くとか、なんてえ顎の力だよ。
だが、九匹中四匹がやられるとさすがに熱も冷めたか、ヴェロキラプトルみてえな獣は一斉に逃げ出した。
まあこうやって全滅さえ免れりゃ、また数を増やして群れとしてやり直すこともできるだろうよ。
賢明な判断ってもんだな。できりゃもう少し早く見切りをつけられりゃ犠牲も少なく済んだんだろうけどよ。その辺はあいつらの勝手ってもんか。
だが、イノシンみてえな獣は、今度は俺の姿に気付いてロックオンしてきやがった。
こいつは木の上までは追ってこれねえ。だから、躱すのは難しくねえ。けどよ、こいつを放っておくと蟷姫と鉢合わせたりしちゃあマズいかもしれねえ。
ついでに久しぶりにこいつの肉を食いたいと思っちまった。なら、やれるとこまでやってみるか。
それに、直感はある。今の俺ならこいつに勝てるってえ直感がな。
で、突っ込んできたそいつを、まず跳び上がって躱す。
と思ったんだけどよ、そいつ、しっかりと反応してきやがった。
「!?」
真っ直ぐ上に跳び上がってきて、牙で俺を抉ろうとしやがった。が、俺の方も反応できたからよ。そいつの頭に足を叩きつけて撃墜する。
いいぜ! 体が勝手に反応しやがった。
俺に蹴られたイノシンみてえな獣は地面に落ちてすぐさま起き上がろうとしてる間に俺も着地して、同時にそいつに向かって飛び込み、体勢を整えようとしてるところを、首に腕を回してクラッチ。全力で締め上げた。
分厚い脂肪の層とバカみてえに強い筋肉と太い骨の感触があったが、それら全部をまとめてねじ切るつもりでとにかく締める。容赦なんざ一ミリもしねえ。
こいつは今日の俺のメシだ。とっととくたばって俺に食われろ。




