鳥怪人
俺も危うくその爪の餌食になるところだったが、気配を察して首をすくめたら、頭を少しひっかかれただけですんだ。
ヤベえヤベえ!
そうしたらそいつは深追いはしてこねえで、足で木の枝に掴まったと思ったら、そのしなりも活かして真上に跳び上がった。
それがまたとんでもねえ高さでよ。いくら枝のしなりを利用したっても、余裕で三メートル以上の高さまで跳び上がって、羽を広げて飛び去って行っちまった。
ほとんど羽ばたかねえで飛んでやがったから、多分、さすがに普通に羽ばたいて飛ぶにゃあ体がでかすぎるんだろう。その分、跳び上がって高さを確保してそこから滑空するってえ感じなんだろうな。
近付いてくる時も滑空してやがったからほとんど音がしなかったってえことか。なんておっかねえ奴だ。
体は小せえ上に空を飛ばなきゃいけねえから体重もしれてるだろ。だから真っ向からやり合やあ負ける要素はねえだろうけどよ。『音もなく空から』ってのはさすがにヤベえ。
しかも、体格だけで言やあどう考えたって持ち上げられるわけねえだろう俺を狙ってくるなんざ、普通に考えりゃまともじゃねえ。取り敢えずまず殺して無力化してそれからゆっくりその場でいただこうってえとこか。
怖え怖え。
マジで油断も隙もねえな。
そうして別のヤベえ奴の存在も確認して、空からの襲撃も頭に入れなきゃならねえってえことになって、尻が引き締まるな。
カマキリ怪人としても、頭そのものはあの鳥怪人の爪も効かねえだろうけどよ。目や耳の穴はその限りじゃねえだろうなあ、さすがに。
だから蟷姫にとっても油断はできねえ相手だろうな。やれやれだ。
でもまあ、そんなこともありながらでもよ、蟷姫の妊娠は順調だったみてえで、だんだん腹が膨らんでくるのが分かった。
こうなってくるとさらに本来の力が発揮できねえようになっていくだろうしよ。ちと心配になってくるってもんだ。
しかも今度は、
『ありゃ、イノシンみてえな獣……か? にしちゃあ、でかくねえか?』
イノシンみてえな獣とまたあのヴェロキラプトルみてえな獣とがやり合ってるところに出くわして、そんなことを思っちまった。
いやマジで、でけえんだよ。これまで見てきた奴に比べて明らかにサイズ感がおかしい。どう少なく見積もっても二回りはでけえだろ。
もしかしたら、種類は近えがまったく別の奴の可能性もあるな。その辺は大した問題じゃねえけどよ。
大物相手にヴェロキラプトルみてえな獣も張り切ってやがんだが、かなり手を焼いてんな。




