相手もそのくらいじゃビビらねえか
縄張りを奪いに来たらしいカマキリ怪人のメスを前にした蟷姫の殺気は、これまでにないほど強烈なものだった。正直、俺も冷や汗が出てくるくれえだ。なんかもう、相手のカマキリ怪人が気の毒になってくるな。
そうは言っても、相手もそのくらいじゃビビらねえか。
何しろ生きるために必要なことだしよ。
蟷姫に対して身構えて、攻撃態勢を整える。
けど、蟷姫が仕掛ける方が早かったな。一瞬で間合いを詰めて、カマを突き出すと見せて相手が反応したところにローキック。これも、カマキリ怪人は普通はやらねえ攻撃なんだろうな。カマでの攻撃に備えてたところに思わぬ攻撃をくらい、相手のカマキリ怪人のメスは完全に体勢を崩された上に意表を突かれて焦ってんのが分かる。
「!?」
意識がとっ散らかって隙だらけだ。
そこに蟷姫の頭突き。
「ガゴッッ!!」
ってえ、おっそろしい音と共に相手の頭が弾かれる。それだけじゃさすがに致命傷にはならねえようだが、怯んじまってるのは間違いねえな。
すると蟷姫はカマで相手の体を掴まえて、もう一発頭突き。
「ギッッ!!」
思わず悲鳴が上がったところへ、今度はボディへの容赦ない膝蹴り。さらに頭が下がったら次は顎への膝蹴り。頭が跳ね上がったら追い頭突き。
いやはや本当に容赦ねえ。
もっとも、相手もそれだけじゃ沈まねえ。お返しとばかりに、蟷姫の腹に飛び込むみてえにして頭突きを食らわしてきやがった。
これには、今度は俺がギョッとしちまう。
『おいっ!!』
と声まで出そうになった。何しろ蟷姫は今は妊娠中だ。それで腹へのダメージってのは、マズいんじゃねえか?
そしたら蟷姫もブチキレた様子で、相手の頭を押さえて猛烈な勢いで顔面に膝蹴りを連発。完全に殺すつもりのそれだな。
それでも相手も、やられっぱなしにはならねえ。五発ばかり膝蹴りを顔面に食らったところでなんとか蟷姫を突き飛ばし、間合いを取る。
口や鼻から血は流れてたが、目を見る限りじゃ意識までは飛んでねえな。人間ならこれで決まっててもおかしくねえのによ。
だが、さすがに怯んだみてえか。すぐさま飛び退いて木の幹を間に挟む形で位置取り、ジリジリと下がっていく。
蟷姫の方も、まだまだすげえ殺気を放っちゃいるが、無理に追撃はしねえ。木の幹を挟んでっから、直線距離以上に間合いが遠いんだ。相手も当然、それを狙ってそうしたんだろ。
で、十分に離れたところで茂みに飛び込んで、そのまま遠ざかっていく。やれやれ、逃げてくれたか。
「蟷姫……」
けどなあ、大丈夫なのか……?




