まったくよお、嫉妬するぜ
すげえ勢いで突っ込んできたそいつに、俺はまた、<崩拳>を放った。そしたらそいつは、完璧なタイミングでカマを繰り出し、俺の腕を捉えようとしやがった。
距離感もバッチリだ。
真正面からじゃ的が小さく距離感も掴みにくいそれにだぜ? 一回食らっただけでもう対処してきやがった。まったくよお、嫉妬するぜ。
だが、こっちも、カマキリ怪人の格闘センスについちゃ見せてもらってるからな。当然、対処はさせてもらう。
カマが俺の腕を捉える直前に拳を開いてそいつの腕を逆に掴み引き寄せつつ、態勢を入れ替え、左の肘を顔面に叩き込んでやった。
「ギッッ!?」
これにはそいつも声を漏らしながら、驚いた様子だった。
悪いな、こっちもそれなりに長い間、伊達に殴り合ってたわけじゃねえ。対処されることがあんのも分かってんだよ。
だがこれでも決め切れねえ。一瞬は怯んだけどよ。やっぱりカマで俺を捕らえようとしたのを、今度はそいつの両腕を腋に抱え込むようにして、腹に膝を叩き込んでやる。
「ギヒッッ!」
そしたら悲鳴を上げながらそいつも俺の体にカマを突き立ててきやがった。背中にカマのトゲが突き刺さる。
「ぐっ!」
痛みはそれほどじゃねえにしても、さすがに声が漏れちまった。ただ、そいつの腕は腋に抱えて固定してっから、それ以上動かすことはできねえし、俺も続けて膝を腹に叩き込んでやる。
人間ならここまでやりゃ武器も掴んでられねえってのに、カマキリ怪人のカマは体の一部だからな。手放すことはできねえか。
やっぱ、最初にカマをへし折るなりなんなりして封じておくべきだったかもしれねえな。
だが、人間が使う手持ち武器と違って、こいつらのカマは体の一部だ。しかも小指が変形してカマの形になってやがるから、たぶん、折れたりしたらもう二度と治らねえだろ。
こいつは俺を殺すつもりで襲いかかってきてるかもしれねえが、俺はただ、蟷姫を譲るつもりはねえってだけで、諦めさせりゃそれでよかった。
なんてことはねえ。『容赦しねえ』とか言ってたクセによ、ついつい手加減しちまってんじゃねえか。情けねえ。
やっぱ俺もまだまだ人間だったってえことか。
頭のどこかでそんなことを考えながら膝を食らわしてた俺に、そいつは今度は、自分の腕を掴んでる俺の腕に歯を立てようとした。蟷姫の膝にしばらく歯形が残るくれえのそれで噛みつかれりゃ、それこそひとたまりもねえ。
だから俺は、噛みつかれそうになった方の腕を放し、体を回転させて、腰投げの要領でそいつの体を地面に叩きつけてやったのだった。




