表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/106

手加減なしの掌打

普通の人間だったらそれこそ脳挫傷辺りで命にも関わるようなダメージを負ってまったくおかしくない、俺の手加減なしの掌打を食らって、そいつは顔面を地面にしこたまぶつけた。


なのにそいつは、一瞬も怯まねえで、ほとんど地面に這いつくばった状態のまま、カマを伸ばしてきやがった。


それを、足を上げて躱し、すかさずそいつの頭目掛けてサッカーボールキック。


これまた人間相手じゃシャレにならねえ一撃だが、確実に入ったはずだが、そいつは蹴られた衝撃を利用して体を起こしてそのまま後ろに飛び退いた。


そして茂みの中に身を隠すと同時に、離れていく気配。


いやはやここまでやってまだその元気があるか。手加減なんざそれこそただの自殺行為だな。


こういう奴ら相手に、俺は生身でやり合わなきゃいけねえのかよ。いいねえ、ゾクゾクするぜ。


ってのはさておいて、蟷姫(とうき)も警戒を解いたのが分かったから、まあもう大丈夫なんだろう。


ただ、どうにも不満そうな様子はあったけどな。自分があいつをぶちのめせなかったのが不満なのか、それとも、俺があいつをぶち殺さなかったのが不満なのかは分かんねえが、とにかく納得できてねえのは確かなようだ。


だから俺は、


「そんな顔すんな。俺は負けなかっただろ?」


声を掛けながら頭を撫でてやる。すると彼女はその俺の手を取って自分の首筋にやって甘えるような仕草を見せる。そこで俺もやっとピンときて、


「中途半端だったのが不満だったのかよ」


思わず笑顔になりながら彼女の要望に応じてやった。そしたら蟷姫(とうき)はいつも以上に激しくて、二度三度と上り詰めた。


そうしたらやっと満足したらしく、すっと体を離して歩き出した。


まったく、可愛いヤツだ。


それでいて、さっきまでの甘えた様子はどこへやら。さっさと前を歩く彼女の後姿を見ながら。なんだか顔がニヤけてきちまう。ますます他の奴に渡したくなくなったな。


そうなりゃ当然、あいつに渡すわけにもいかねえよな。たとえあいつを殺すことになってもだ。


人間社会じゃ許されねえことだが、ここじゃお互いに命を張ってんだ。もちろん死にたくはねえだろうが、殺されたところで文句を言えるような世界じゃねえし、俺も文句なんざ言うつもりもねえよ。


それに、俺が強えから蟷姫(とうき)も俺のことを気に入ってくれてるんだろうしな。


そんなことを考えながら歩いて、途中で餌を捕まえて食いながら、巣に戻る。


さあて、あいつもこのくらいじゃ諦めねえだろうし、俺も、格闘術だけじゃなく、体そのものを一から作り直さなきゃいけねえかもしれねえな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ