いきなりえらくテンションが高え
そんなこんなで蟷姫と一緒に縄張りを見て回ってると、今日はイノシンみてえな獣と遭遇した。
「フゴッ! フゴアッッ!!」
向こうとしても、カマキリ怪人である蟷姫と出くわしたことに焦ったのか、いきなりえらくテンションが高え。当然っちゃ当然だな。ヤベえ相手に遭遇したんだ。自分の能力をいかに早く最高の状態に持っていけるかは、そのまま生き死にに直結してるだろ。
前にヴェロキラプトルみてえな獣とやり合ってた奴と大きさは同じくらいか。
一方、蟷姫も完全にやる気なのが分かった。動いてるものしか食わねえカマキリ怪人の性質上、食い切れないことも多いわけで、実は獲物はデカけりゃいいってわけじゃねえのも事実みてえだけどよ、こうしてて出くわしちまった以上は無視もできねえんだろうなあ。
で、蟷姫が動いた瞬間、イノシンみてえな獣も、弾かれるみてえにして動いて、猛烈に突進してくる。
重さは精々七十キロ程度だろうが、速度は一瞬で三十キロを超えたのが分かった。すげえ加速だ。加速だけでも人間のトップアスリートなんざ目じゃねえな。最高速も五十キロは出るんじゃねえか、これ。
だが蟷姫は、余裕でそれにタイミングを合わせてきた。イノシンみてえな獣の横っ面に文句のつけようのねえ角度と速度で蹴りを叩き込む。
するとイノシンみてえな獣の体が横から車にはねられたみてえに、空中で回転しながら綺麗に吹っ飛んだ。
まあ実際には、真っ直ぐ突っ込んできた所に横方向の強え力が加わったから軌道がずれて斜めに吹っ飛んだだけなんだけどよ。それでも生半可な威力じゃさすがにこうはならねえ。蟷姫の蹴りのそれがヤベえくらいの域に達してるってのが分かっちまったよ。
いやはや我ながら恐っそろしいのを育てちまったもんだ。
でも、彼女の成長ぶりを見るのは悪い気はしねえ。
それでも、イノシンみてえな獣もそんくらいじゃあやられねえか。茂みに突っ込んだ直後にゃあ飛び出してきて、また突撃してくる。
さっき手痛いのを食らったばっかりだってえのにまたかと思ったが、蟷姫がもう一度、蹴りを食らわそうとした瞬間に前足を突っ張ってタイミングを外してきやがった。
ははは! そうだよな! 何度も同じのを食らってるような間抜けじゃあ、生き残れねえよな!
だが、蟷姫もそれは読んでいたのか、空振りした勢いをそのまま使って背中を向けた状態での背後目掛けて突き出す蹴りに繋げた。これがきれいに決まって、イノシンみてえな獣の鼻っ柱に突き刺さる。




