俺は平気だからなあ
でもなあ、俺としちゃそこまで火に頼る必要も感じてねえんだよな。火を通した方が美味いっちゃ美味いんだが、別に生のままで食っても、別に問題ねえしなあ。俺の場合は。
他の人間じゃあ腹も壊すかもしれないけどよ。
俺は平気だからなあ。
保存用の燻製肉を作る時くれえかな。本格的に使うのは。
暖房ってえ意味でもそこまで必要じゃねえし。
ははは、なんか俺の方が野生化してるんじゃねえかな。
でも、それも悪い気はしねえ。どうせ、人間の社会に戻ったところで俺の居場所もロクにねえ。
しかも今のこの体じゃあ、それこそなんだかんだで研究対象ってことにされて弄り回されるのは間違いねえよな。
ガキの頃だってゴリラ並みの筋力を持ってるってえ俺の体の秘密を調べてえって奴らに散々弄り回されたしよ。あんなのはもう御免被りたいぜ。
だから俺はここで、面白おかしく生きてやる。蟷姫もいるしよ。
「蟷姫、ありがとうな。お前がいてくれるから、俺も今を楽しめてるってのあ、間違いなくある。愛してるぜ」
「……?」
なんて話しかけても意味なんざ理解しちゃくれねえが、事が済んだらケロっとしてやがるが、それがまたいい。
で、次の日もまた見回りに出たんだが、今日は蟷姫もついてきた。まあ、『そういう気分だ』ってことだろうさ。
それか、たまたま行く方向が同じだったか。
別にどっちだろうが構わねえが、蟷姫が歩いているのを俺が後からついていく。だが、うっかりすると見失いそうになる。
隠れてるとか、離れてるとかじゃねえんだ。ほんの何メートルか前を歩いてるだけだってえのに、一瞬、姿が見えなくなる。それだけ気配を消すことに長けてるんだろうよ。
しかも、歩きながら、自分の目の前を通り過ぎようとした鳥をカマで捕らえて、おやつでも食うみてえにその場でバリバリかじった。
そんな様子も可愛いぜ。
でもなあ俺にとって可愛いってえこたあ、同じように感じる奴もいるってことかもしれねえ。
「……」
蟷姫が不意に立ち止まったのに俺もハッとなる。警戒してるのが分かったからだ。そんな彼女が視線を向けてる先に、何かがいる。
そして俺にもそれが何か分かっちまった。蟷姫と出逢って彼女のことをよく見てたからピンと来た。そうじゃなかったら分からなかったかもしれねえ。
<カマキリ怪人>だ。蟷姫とは別のカマキリ怪人がそこにいやがった。
そりゃまあ、蟷姫がいるってえこたあ、他にも仲間はいるよなあ。
当たり前の話だ。
でも、『仲間に会えて喜んでる』ってえ雰囲気じゃねえな。
どっちからもすげえ殺気がバシバシ伝わってきやがる。




