自分が人間なんだってのを
しかもテロリストの場合、ガキでも、いや、ガキだからこそ無茶をしてくることもあった。だから手加減とかできねえんだよ。ガキだろうがなんだろうが、殺らなきゃ殺されるってえのが当たり前だった。
そうなりゃ、自分や仲間を死なせねえために容赦できねえだろ?
けどな、後味はよくねえ。よくねえよ。
でもなあ、野生の獣の場合は、それこそ人間じゃねえからな。普通の人間じゃねえと言ったってやっぱ人間の範疇ってことになる俺が他の種族のことに口出しするってなあ、違うだろ。
そしたら、蟷姫が<白ウサギのコスプレザル>の方に向かって走り出してよ。
「は……?」
と一瞬呆気にとられたが、だよなあ、『そういうこと』じゃねえよなあ。
<イジメられてる白ウサギのコスプレザルの子供>
のところに迫った蟷姫に気付いた群れが、
「ギャアッ!?」
ってえ感じで悲鳴を上げて逃げ出した。<自分達がイジメてた子供>をそのままにしてな。
で、蟷姫は、<イジメられてた白ウサギのコスプレザルの子供>にカマを伸ばして捕まえ、
「ギヒッ!?」
一声悲鳴を上げる余裕しか与えずに首をへし折ったのが分かった。
人間で言うとそれこそ十歳くらいの子供だった。その首をためらうことなくへし折って、そしてビクビクと痙攣してる体にそのまま喰らいつく。
ああ、そうだ。蟷姫は野生の猛獣なんだ。人間の目には、
<コスプレしてるだけの子供>
にしか見えねえ相手だろうが、彼女にとっちゃただの<獲物>なんだよ。
そして、<白ウサギのコスプレザルの群れ>からすりゃ、まさにこういう時にわざと天敵に襲わせることで自分達が逃げる時間を作るための<生贄>でもある。
俺がテロリストのガキを容赦なく撃ったのは、相手も容赦なく殺しに来てたからだ。『殺らなきゃ殺られる』状況だったからだ。別に食うために殺したわけじゃねえ。
でも、蟷姫は、食うためにガキだろうと殺す。
けど、人間も食うために仔牛とか殺してるしな。それと同じだと考えりゃ変でもねえか。
ましてやカマキリ怪人にとっちゃ、白ウサギのコスプレザルは忍者ザルよりも弱え<絶好の獲物>だろ。だったらこれが普通なんだよ。
普通だと頭じゃ分かってるんだけどよ……
テロリストのガキが俺に撃たれて泣きながら死んでいった時の顔が頭に浮かんじまったよ……
まったく、胸糞悪りい……
悪りいが、蟷姫にゃなんの責任もねえし、彼女を責めなきゃいけねえ理由もありゃしねえ。問題はあくまで俺の受け止め方だ。彼女はなにも間違っちゃいねえ。
ただ、言っても自分が人間なんだってのを改めて思い知らされちまったなあ……