表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/106

とんでもねえ奴だ

「ゲヒッ!?」


蟷姫(とうき)の蹴りを背中に受けて、忍者ザルが悲鳴を上げる。しかも、枝を掴み損ねて地上に落ちた。


「ゲッ!? グエッ!?」


モロに蹴りを食らって、横隔膜辺りが痙攣でも起こしたか、まともに息ができないようだ。血を吐いたりはしてねえから、肺までやられたわけじゃねえみてえだけどよ。


そこに蟷姫(とうき)が飛び降りてきて、頭を踏み潰そうとする。が、これは忍者ザルも簡単には食らわねえ。その程度で諦めるほど往生際もよくねえか。


かろうじて躱して飛び退き、長い腕を伸ばして枝を掴み、樹上に戻ろうとする。


ああでも、蟷姫(とうき)の方が上手だったなあ。枝を掴んだ忍者ザルの腕にまた蹴りを叩き込み、「ベキッ!」と、湿った独特の音をさせる。肉の中で骨が折れる音だ。


「ギャアッ!!」


また悲鳴を上げて、それでも忍者ザルはもう一方の腕で枝を掴み直し、体を持ち上げる。いやはや、しぶとい。人間だったら腕の骨を折られた時点で心も折られて情けない顔をするところだったかもな。


だが野生の獣ってのは、諦めが悪いんだ。腕が折れようが脚が折れようが、体が動くうちは生きようと足掻く。忍者ザルもそうだった。


手が使えないなら足で枝を掴み、蟷姫(とうき)の追撃を躱す。


ははっ! やるなあ!!


でもよお、蟷姫(とうき)の怒りはそんなことじゃ収まりそうにないな。躱された蹴りを木の枝に引っ掛けて自分の体を持ち上げ、忍者ザルに追いすがる。


すると忍者ザルも、折れた腕さえ木の枝に引っ掛けて複雑な機動を見せ、彼女のカマを紙一重で躱す。が、蟷姫(とうき)も諦めちゃくれねえなあ。


カマが空振りした反動を使って体を縦回転させ、浴びせ蹴りのようにして足を繰り出す。


おいおい、それは俺は見せてねえぞ。自分で編み出しやがったか。


とんでもねえ奴だ。まったく。


しかもその浴びせ蹴りで忍者ザルの足を払い、バランスを崩させた。さらにその所為で折れた腕の方に体重が掛かったらしく、


「ギアッ!!」


とまた悲鳴を上げながら滑り落ちた。


その忍者ザルの体に空中でカマを引っ掛けて掴み寄せ、蟷姫(とうき)はそのまま一緒に地面に落ちてきた。ちょうど、忍者ザルの頭を下にした状態で。


ああ、見たことあるぞ、これ! 大昔の漫画だ! <飯綱(いづな)落とし>ってヤツだ!


蟷姫(とうき)自身も頭を下にしてたが、本能的なものか、忍者ザルの頭を自分の頭よりさらに下にして先に地面に叩きつけ、それをクッションにして自分はダメージを回避してみせた。


「ゲヒッッ!?」


モロに頭から、それこそ自分と蟷姫(とうき)の全体重を乗せた状態で地面に落ちた忍者ザルの悲鳴は、まあヤバいそれだったな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ