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俺にとっての現実

『こうして殴りゃ痛えし、腹も減りゃクソもする! ただのデータとか言われても俺にゃそんなのは関係ねえな!』


そうだ。それが俺にとっての現実だ。


「俺はここにこうして生きてる! それは譲れねえ!」


言い切ってやった。そうすると、明らかに凹んだ様子だった連中も、


「そうだな。確かにその通りだ」


「なるほど、外部から観測できない限りは、我々が本当にデータヒューマンなのかどうかも確定的な話じゃない。こうして生きている実感があるのなら、実際に生きているということを前提に対処するべきだろう」


という話になった。まあ、生きて帰れないかもしれねえリスクを背負って惑星探査なんてもんに出掛けようっていうイカれた連中の集まりだからな。頭の切り替えも早え。




そんなわけでまずはここで生き延びることを選択した俺達だったが、実はこれ自体、次の展開の前振りでしかなかったんだよ。


そこには文明って呼べるもんがまったくなかった以外には、気候も穏やかで、食えるものにもまるっきり困らなかったから、正直なところ、本当にぬるま湯みてえな暮らしだった。メンバー同士がくっついてガキができたりして人数が増えてくると気の合う奴、合わない奴、みたいなのが出てきて集落を分けるようになったりもしたが、それも、話が拗れる前に手を打っておこうってだけの話だから、大した問題じゃなかった。


出て行ったのは俺を含む軍人が中心のメンバーだったからな。新しく拠点を作るのもお手の物だ。


生活レベルは前の所も新しい所も大して違わねえ。それならこれといって不満も出ねえ。


なのにある日、ジャックやオリビアと一緒にいつもの哨戒に出ていたら、なんかまたいきなり、水の中に放り出された。それこそまったく前触れもなくだ。


さすがに一瞬は焦ったが、軍での訓練で水に落ちた時の対処法も叩き込まれていたこともあって、すぐに冷静にはなれた。


なれたんだが、本当に何だってんだまったく。神だとかがふざけた遊びでもやってやがんのか?


そんなふうにも思っちまうね。


しかもその時、俺の体は本能的に危険を察知していた。いきなり水の中に放り出されたというそれもたいがいだが、それとはまた別の、もっとヤベえ肉食獣に目をつけられた時の感覚だな。


だから俺は、軍で水中戦闘の訓練を受けた時の感覚を記憶の隅から引っ張り出してきた。水を押し退けて<敵>が迫る際のそれを察知し、ぶん殴る。


だが、


「硬えなあ、おい!!」


拳に当たった感触が、まるで鎧でも殴ったみてえなそれだった。<ボディーアーマー>じゃねえ。鎖を編み上げた<チェーンメイル>ってヤツが頭をよぎったのだった。



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