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ぬるい<ごっこ遊び>じゃ

だからまあ、武器についちゃ用意もしたんだけどよ、木の枝を尖らせただけのナイフもどきじゃ、カマキリ怪人の鎧にゃ、なんにも意味ねえんだよな。


刺さるどころか凹ませることもできやしねえ。目や口にでも刺せりゃいけるかもしんねえが、そんな分かりやすい弱点なんざ、向こうだって狙わせちゃくれねえよな。


それに俺の方も、油断さえしなきゃ、こいつ相手に殺されることはねえのも分かってきたしな。並の人間にとっちゃこいつは余裕で命も取られかねねえヤベえ猛獣なのは間違いねえ。でも俺にとっちゃそこまでじゃねえんだ。


それどころかちょうどいい<スパーリング相手>ってえ感じだな。殺気自体は本物だから余計にちょうどいいんだよ。ぬるい<ごっこ遊び>じゃ尻も締まらねえし、<玉>も収まるところに収まらねえ。


ガチの格闘家でも滅多に見られねえ鋭い蹴りが俺の頭を掠めるが、それがいいんだ。


『まともに食らえば死ぬだろう』


背中に刺さる直感。


いい! たまらねえ!


「だが、蹴りってのは、こうだ!」


殺気も威力も本物だが、<技>としちゃさすがにまだ狙いが甘えカマキリ怪人に、<技>としての蹴りを見せてやる。


大振りな、『鈍器を叩きつけようとしている』蹴りじゃなく、『でかい刃物でバッサリと斬り払う』蹴りだ。相手の意識そのものを刈り取る、な。


「!?」


驚いたような表情を見せたカマキリ怪人の頭を斬り落とす。


と言っても、本当に斬り落としたわけじゃねえけどよ。


それでも、一瞬、意識と身体が切り離されたカマキリ怪人の膝がストンと落ちて地面に座り込んだ。ちょうど、<女の子座り>ってえ感じの座り方だな。


で、プロポーションが女のそれだからよ、それこそコスプレをした女が座り込んだみたいになってやがる。


しかも悔しそうに俺を睨みあげてるのがどうにもこうにも。


「悔しいか? ならもっと強くならなきゃなあ。俺も、お前のことが気に入ったよ。お前とこうやってやり合うと、スッキリした気分になる」


言いながら手を差し出してみる。


人間じゃねえからこんなことすりゃあそのまま指を食いちぎられたりするかもしれねぇが、もちろん、指をくれてやるつもりはねえが、なんかこん時は予感みてえなのがあったな。


そしたらカマキリ怪人の方も俺の手に指を伸ばしてきて、掴んで、自分の首を差し出すみてえに顎を上げて。


俺の手首に擦り付けてきやがった。


さすがに馬鹿な俺でも察したよ。


『こりゃ求愛行動だろ……』


ってえことでな。なるほど、<強えオス>が<モテるオス>ってえことか。



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