見た目が人間に近えのを無理して食う必要もねえ
で、<白ウサギのコスプレザル>については、距離さえ保ってりゃそれほど警戒する相手でもなさそうだってんで、まあいいだろ。
獲物として狙う必要があるかってえ点でも、他に獲物にできそうなのが十分いるしな。
見た目が人間に近えのを無理して食う必要もねえ。
そんなことより他にも地形的なもんやらなんやらをまず把握すんのが重要だろ。
だから俺はその辺をぶらつくことにした。すると、<ヴェロキラプトルみてえな獣>の子供みてえのがうろちょろしているのにも気付いたが、これあアレだな。似ちゃいるが別だな。
だがこうやってまた川の方に向かって歩いたが、どうにも川に近付くと動物が減る印象がありやがる。虫やら小せえのはそんなには変わらねえ気がすんのに、<ヴェロキラプトルみてえな獣の小さえ版>みてえのもいねえんだよ。あの<白いウサギのコスプレザル>もいねえし、俺の様子を窺ってる気配もしねえ。そういう動物がいねえってこった。
川にゃあの<ワニ怪人>みてえのがいるからか? いや、強えのは確かに強えけどよ、そこまでか? <カマキリ怪人>でも十分に相手できんだろ。そこまでビビらなきゃいけねえほどの奴でもねえ。
……てことは、もっと<ヤベえの>がいるってえことか……?
まあそういうことなんだろうな。なら俺も、あんまり近付かねえようにしとこうか。この手の予感ってヤツは無視しちゃいけねえ。予感を無視するヤツあ長生きできねえ。
川に近付かなくても水はある。無理をする理由はねえさ。
『川に近付かなくても水はある』ってのも、そういうことなんじゃねえのか?
川まで行かなくても水が得られるってのは、動物にとっちゃそれこそ命に関わる話だ。だからここの動物も生きてられるってえことなんだろうよ。
まったく。自然ってのはよくできてるぜ。天敵相手に生き延びる手段さえありゃあそれなりに生きていけんだからよ。
そうは言っても、『天敵相手に生き延びる』ってのが高えハードルっちゃあそうなんだけどな。
と、首筋にチリチリと刺さる感触。また俺を狙ってるのがいやがるな。
しかもこの感じ……覚えがある。
「あいつか……」
その気配がする方に目を向けると、木の幹に同化したみてえにして気配を消してるつもりなんだろうなってえあの<カマキリ怪人>がいやがった。
確かに普通の奴じゃ気付かねえだろうが、殺気が強すぎんぞ。隠しきれてねえ。
けど、なんかそれが逆に可愛くてよ。
「俺を食いてえんならいつでも来な。ぶちのめしてやっからよ」




