白いモフモフしたウサギのコスプレをした人間
「なんだありゃ……?」
俺は思わずそう呟いていた。というのも、そこにいたのは、
<白いモフモフしたウサギのコスプレをした人間>
ってえ感じの、ファンシーな連中だったからだ。まあでも、<コスプレした地球人>じゃねえことはすぐに分かったよ。地球人はあんなに木の上を自在には動けねえ。
そうだな。見た目は、
<耳の垂れた白いウサギ>
てな印象だが、身のこなしは完全にサルだ。あの<黒いテナガザル>みてえな奴とは正反対そうな印象だけどよ。生き物としちゃ似たような生き方をしてるっぽいな。
だが、向こうは単独で生きてて、こっちは群れを作ってる感じか。
少なくとも十匹……十人?はいるな。でかいのから間違いなく子供だなってのまでしっかりと。
母親らしいのに抱かれてる小さいのもいやがる。だからやっぱ<サル>だ。こいつら。
しかも俺に気付いたらしく、オスらしいのが、
「ギャアッ! ギャアッ!!」
と木の枝を揺らしながら威嚇してきやがった。その時の様子を見ただけでも、地球人よりゃあ圧倒的に強えのが分かる。体重は六十キロ前後ってえ感じか。それがああやって木の枝に掴まってぐいぐい動かせるってんだから、握力は最低でも二百キロ以上。チンパンジー並、だな。
直感として俺の方が明らかに強えが、数が多い。一度に来られると面倒だ。あの<ヴェロキラプトルみてえな獣>と同じか。
けど、見てる様子じゃ雑食ってえ印象がある。歯並びが地球人に近え。肉ばっか食ってる奴のそれじゃねえんだ。となりゃ、こっちから仕掛けなきゃ襲ってもこねえだろうさ。
ただ、こんなきれいに真っ白なモフモフの毛皮に包まれたような目立つのがよく生きてられるもんだぜ。そのための群れってことなんだろうけどよ。
にしても、なんで<真っ白>なんだ?
すると、俺を威嚇してくるオスどもの向こうで、母親らしいメスが、自分が抱いてる子供の体に何かを塗りたくっていた。
<花>……か? 花らしいのを手に取ってそれをすりつぶして子供の体に塗ってやがる。
ふん、もしかするとあの真っ白な毛皮はその所為か? なんかの理由であれを体に塗るようになって、それで毛皮が白くなったとか?
その辺はどうか分かんねえが、こうやって生き延びられてんだからこいつらに取っちゃちゃんと意味があることなんだろうさ。
俺がごちゃごちゃ言うこっちゃねえ。
それに、向こうから襲い掛かってこねえんなら、俺の方からも近付くつもりはねえよ。
「ま、<お隣さん>としてよろしくたのむわ」




