『生き延びる』ってのを
まるでナイフみてえな爪が肉に食い込んでくるのを感じつつ、そいつの下顎に拳を叩き込む。
下顎が砕ける感触とともにそいつの力が抜けていくが、食い込んだ爪が引っかかってすぐには外れねえ。
だからそいつの前足を掴んで、俺自身、猛烈に体を回転させる。そうして、近付いて来ていた他の奴らを弾き飛ばし、間合いを取る。
『やっぱ、武器ってのは必要だなあ』
ふとそんな考えが頭をよぎる。戦うことを楽しみてえだけなら、てめえの体ひとつでどこまでやれるか?ってのも楽しめるんだろうけどよ。『生き延びる』ってのを一番に考えるんなら、なるべく楽に対処できるようにしなけりゃなあ。
『いつ死んでもかまわねえ』みてえに今まで考えちゃいたが、軍で命張ってた時もどっか投げやりなところがあったってなあマジだけどよ、なんだろうなあ、獣相手にこうやって命のやり取りをしてっと、
『生きなきゃいけねえ』
ってえ気分になってきやがる。これが生き物の本能ってやつなのかねえ。
それがどうかは俺には分からねえが、今はその気分に正直になった方が良さそうだ。
だがそれあ、つまり『俺の命がヤベえ』ってのを、本能が教えてるってことだろうな。
あと、
『今は死に時じゃない』
って感じか。なら、生きなきゃいけねえなあ!!
「おら! おらあ! おるああっ!!」
自分に出せる最高速で拳を繰り出しつつ、<ヴェロキラプトルみてえな獣>をぶちのめす。
だが、まだ五匹残ってやがってそれが一度に襲い掛かってきやがるから一発一発に全力を込められねえことで、顎を砕くほどの威力が出せねえ。
クソっ!! やっぱ甘くねえなあ!!
とか泣き言並べてて生き延びられるわけじゃねえし、今は何とか持ち堪えて機会を待つしかねえか。
すると、
「ギャッ!!」
俺の背後で悲鳴が。しかも、後ろからかかってくる奴を迎え撃つために体を回転させたが、来てるはずのがいねえ。そして、
「お前! さっきの……!?」
また別の奴をぶん殴りながら思わず声が出る。そうだ。そこにいたのはさっきの<カマキリ怪人>だった。しかも、カマで<ヴェロキラプトルみてえな獣>の首を挟んで捕まえてやがる。
乱入か!?
それがどうかは分かんねえが、これで四匹になった。ありがてえ!
俺はガツン!と地面を踏み、その反動を足から拳へと伝えて、全力で一番近くにいた奴の下顎を打ち抜いてやった。
「ゴシャッ!!」という感触と共に、獣が地面に叩きつけられる。
残り三匹!!
が、次の奴に狙いを定めたその瞬間、<ヴェロキラプトルみてえな獣>が、逃げ出しやがった。
そりゃそうか。仲間が半分以上やられたからな。もう勝ち目がないと判断したってことか。




