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人間がひ弱なのか、野生の獣が頑丈ってことか

だがその時、俺の背筋を冷たいもんが奔り抜けた。無視しちゃヤベえタイプのそれだ。だから俺は、自分の身体が反射的に動くに任せて、一切容赦のねえ渾身の一撃を食らわせてやった。ワニ怪人の時もそうだったが、今回はそれこそがっちりとした足場がある場所で、これまでの俺の人生の中でも一番と言ってもいい会心の拳だった。


「!?」


だが、拳に伝わってきた感触は、またも命を叩き潰した手応えのねえものだった。


威力は十分だったはずだ。拳に感じた威力そのものはな。かつてテロリストとの戦闘の際に、仲間を銃で狙っていた奴を咄嗟にぶん殴って死なせた時以上の一撃だったってのによ。


それだけ人間がひ弱なのか、野生の獣が頑丈ってことか。


だが、怯ませることには成功したようだ。


「ゲッ……! ゲヒ……ッ!」


胸を押さえて地面をのたうち回っている<そいつ>を見て、俺は、


「今度はカマキリ怪人かよ……」


と呟いていた。いや本当に、


<カマキリのイメージをデザインした怪人>


って感じだったんだよ。ご丁寧に両手には<カマ>まで備えてよ。


しかも、


「女……? メスか、こいつ」


思わず口にしちまったように、胸が膨らんでる感じだったんだ。


女相手に手加減なしで正拳をぶち込んじまった形にはなったが、まあ相手が女だろうが子供だろうが、手加減しちゃこっちの命に関わる場合は容赦はしねえよ。容赦や手加減なんてのは、それだけ余裕がある場合だけだ。できんのはな。


その余裕が今回はなかった。それだけの話でしかねえ。


でもまあなんか、やる気が削がれちまったよ。本当はこの場でとどめを刺しておいた方が良かったのかもしれねえが、しっかりと乳の形に膨らんだ胸を押さえながら這いつくばって俺を睨みつけてるそいつを見ているとなあ。


ヤバい肉食獣だってのは分かる。気付くのが一瞬遅れていたら俺が死んでいた。死んでこいつの腹ん中に収まっていただろう。それを考えたらここで殺しておくのも一つの手かもしれねえ。


ただなあ、こいつがここで普通に生きてる獣だってんなら、こいつと同じのが他にもいるってことだろう? 安全のためにこいつらを殺すってなりゃ、それこそ全滅させるしかねぇ。


できんのか? そんなことが。


いやあ、どう考えても無理だろそんなこと。一匹二匹殺したところでこいつらがいなくなるとも思えねえ。


襲われた時にやり合って死なせちまうなら、死んでたのは俺かもしれねえんだからそれはお互い様ってもんだろうが、こうやって這いつくばってる奴をなぶり殺すってなあ、趣味じゃねえな。



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