それこそ全力で確認できる
改めて行道がこの世界で生きていくのに必要な力を持ってると実感した俺は、むしろホッとしていた。普通の人間なら、見た目も可愛らしい鳥怪人に同情もするのかもしれねえけどよ、ここじゃあそれは違えからなあ。
親として子供の成長を素直に喜ぶべきだろ。
「……」
けど、行道は俺の姿に気付いて、それこそゾッとするような視線を向けてきた。
ああ、
『いよいよその時が来たんだな』
と察したぜ。
動かなくなった鳥怪人の死体を放り出し、血まみれの自分の口をべロリと舐めた行道が、壊れた人形みてえに何度も枝に引っかかりながら落ちていく鳥怪人が地面に着く時にゃもう、俺に襲い掛かってた。
鳥怪人を仕留めた時のそれとまったく同じ、本気の殺気だ。俺を殺して縄張りを奪うつもりだってえのがよく分かる。
自分の子供がこうやって本気で殺しにかかってきてるってのに、俺はなあ、逆にワクワクしちまってたんだよ。こいつの成長がどれだけのもんか、それこそ全力で確認できるってんだからなあ!
そりゃワクワクすんだろ。
「来いよ! 行道! 俺を殺してみろ!!」
思わず漫画みたいなことを叫んじまってた。けどな、それこそ正直な気持ちってえもんだ。正直な気持ちだからつい口に出ちまったんだよ。そうじゃなきゃ恥ずかしくて言えるか、んなこと。
「……」
もちろん行道の方はそんなこと応えてくれねえ。でもよお、殺気がまるで緩まねえんだよ。それがもうこれ以上ねえ答えだろ。
だから俺の方も、完全に殺すつもりの一切容赦のねえ崩拳を放ってやった。しかもそれは、当たればこれまでの生涯最高の手応えになるのは間違いねえっていうそれだった。
恐竜怪人に食らわしたヤツを超えてくるのは間違いねえと直感した。
ははは! まさかここにきてそれたあ、我ながら震えるぜ!!
けどよお、行道の奴、それを楽々超えてきやがったんだ。俺の拳が届く前に、カウンターで逆に自分の拳を届かせやがった。しかもそれは、崩拳でも何でもねえ、見様見真似で拳を縦に構えただけの、普通の拳打だった。
だってのに、俺の脇を捉えたそいつは、体ん中に爆弾でも打ち込むみてえなヤツだった。
マジで体ん中が爆発したかと思ったぜ。肋骨がへし折れて右の肺が破裂したのを感じた。
ちくしょう! すげえ! すげえな行道!!
「……っっ!!」
叫びたかったんだけどよ、肺が潰れちまったせいか 、声が出ねえ。血が溢れて溺れるのを感じる。
自分の血で溺れ死ぬとか、滅多にできねえ体験だよなあ!
けどよ、まだだ! まだ死なねえぜ!!