ピピとポポと流れ星
お父さんが病気で寝たきりになってから、お母さんはいつも忙しそうだった。
朝起きたら洗濯をして僕たちのご飯を作る。
ぼくとポポが学校に行っている間はお仕事をして、ぼくたちが帰って来たらまたご飯を作る。
そして洗濯物を畳んでお掃除をしてお父さんの看病もする。
お仕事がお休みの日もそれは変わらない。
ある日、学校へ向かっていたらこんな話が聞こえた。
「今日は流星群がいーっぱい見られるらしいよ!」
「えー!すごーい!」
「りゅうせいぐんってなに?」
「流星群は流れ星のことだよ!たーくさん流れ星が見られるんだって!」
「たくさん!?それなら願いごとも叶いそうだね」
「楽しみだねー」
流れ星に願いごとをすると叶うというのは有名なお話。
ぼくもポポも誰もが知っているくらい有名な。
今夜、流星群が見られるんだなーと考えていたらポポが言った。
「ねぇ、願いごとが叶うなら、お父さんの病気もなおるかな?」
ぼくは目をまんまるにしてポポを見た。
そんなぼくを気にせずポポは続ける。
「お父さんがなおったら、お母さんもゆっくり休めるかな?」
お母さんにゆっくり休んでほしいねっていつもふたりで話してた。
ポポはそれを思い出したみたいだ。
「すごいやポポ!すごくいい考え!」
ぼくの言葉にポポはうれしそうに笑った。
「学校が終わったら流星群がいっぱい見られるところを探しに行こう!!」
「うん!!!!」
僕たちは興奮して学校まで走って行った。
ぼくもポポも、その日は流星群のことで頭がいっぱいでソワソワして集中できない1日だった。
学校が終わるとすぐにポポと流星群がいっぱい見られるところを探しにでかけた。
途中でポポが聞いてきた。
「お兄ちゃんはいっぱい見られるところ誰かに聞いた?」
「聞いたけど、ちょっと遠いところだったよ。」
ぼくは残念そうに言う。
ポポも聞いて回ったけどやはりいっぱい見られるところは遠いところだったようだ。
「でもさ!近くでいっぱい見られるところが絶対にあると思うんだ!あちこち探してみようよ!」
ぼくが言うとポポも同意してくれた。
「うん!絶対お願いごとしたいもん!探そう!」
僕たちはいつも遊ぶ公園の方は向かった。
公園では見慣れた友達が遊んでいた。
「おーい!ピピにポポ!遊ぼうよー!」
遊びに誘ってくれたけれど、ぼくたちは流星群をいっぱい見られる場所をさがしているからと断った。
そして見られそうなところを知らないかと話した。
向こうの広場はどう?と教えてくれたので広場に向かうことにした。
広場には誰もいなかった。
そしてぼくとポポは流星群がいっぱい見られるか調べることにした。
広場のまわりには木がたくさん生えていた。
広場は木におおわれていて、空は少ししか見えなかった。
「これじゃあ流星群いっぱい見られないね…」
「そうだね…」
ポポもぼくもガッカリした。
次はどこに向かおうかとふたりで話していると、草が生い茂っているところからガサガサと音が聞こえた。
ぼくとポポがおどろいて振り返ると大きな犬があらわれた。
首輪はしていたけれど、鎖の先に引っこ抜かれた杭がついていた。
そして犬は興奮状態でこちらに向かってきた。
『わぁぁぁぁぁーーーー!!!』
ぼくとポポはとにかく逃げた。
犬は追いかけてきていたけれど、途中でポールに引っかかって止まった。
その隙にぼくとポポはひたすら逃げた。
疲れきったぼくたちは、ちょうどベンチがあったので座って休むことにした。
「こわかったね」
ポポは半泣きだ。
「うん。びっくりした」
そう言うぼくも少し涙が出ていた。
ひざもガクガクしている。
少し落ち着いてきたのでまわりを見渡した。
………。
ここはどこだろう。
ただただ逃げてきたので、まったくまわりを見ていなかった。
ぐるっと周囲を見てもここがどこなのか全然わからない。
ーーーー大変だ。
ポポはそんなぼくに気が付かずに水筒のお茶を飲んでいた。
ぼくも気持ちを落ち着かせるために水筒に手をのばした。
ドキドキする気持ちをお茶と一緒に流し込んでみたけれど、この後どうすればいいかまったく思い浮かばない。
ドキドキは増えるばっかりだった。
どうしよう。
するとポポが言った。
「そろそろおうちに帰らなくちゃ。夜になっちゃうよ。」
「うん…」
ぼくはポポに聞いてみることにした。
「ポポはぼくたちがどっちから来たかわかる?」
「え…?」
ポポがまわりをぐるっと見渡した。
そしてぼくの顔を見る。
ようやく迷子になってしまったことに気がついたようだ。
「お兄ちゃんわからないの…?」
「うん…」
一瞬とても静かになった。
「う…うぅ。」
「うわぁん!!!」
ポポが泣きだした。
ぼくも泣きたくなった。
あたりは暗くなってきて、人の気配もない。
一体ここはどこなのだろうか。
とうとう堪えきれずにぼくも泣きだした。
「うわーーーーーん!」
すると木の影からガサガサと音が聞こえた。
ぼくたちはまた犬が出てくるのではとそちらを見つめて泣き止んだ。
木の影から出てきたのはお母さんだった。
「あらあら、ふたりしてずいぶん遠くに来たのね」
ぼくたちはおどろいたけれど、途端に嬉しい気持ちになってお母さんに駆け寄った。
「おかあさーーーん!」
「こわかったよー!」
お母さんはぼくたちを抱きしめて、あらまぁと言って笑った。
その時、空が急にパァッと明るくなった。
ぼくもポポもお母さんもおどろいて空を見上げた。
「すごいわ…」
お母さんが言った。
ポポも言った。
「流星群、お母さんも一緒に見れたね!」
そしてぼくとポポは流れ星に向かって言った。
『おとうさんの病気が治って、お母さんがゆっくり休めますように!!』
お母さんはすごくおどろいた顔をしていた。
そしてすぐに泣き笑いになった。
小さな声でありがとうと聞こえた。
ぼくとポポは顔を見合わせてふふっと笑った。
流星群を見ながらぼくたちは3人で手をつなぎながら帰った。
「そういえば、お母さんはなぜあそこにいたの?」
ポポが聞いた。
「お父さんの病気に効く薬草がこのあたりに生えているってお話を聞いたのよ。」
見つからなかったけれどねと言った。
「どんな薬草なの?」
ポポが聞くとお母さんは教えてくれた。
白っぽいふわふわした葉っぱで、きれいな黄色い花がさくそうだ。
ふと、星が落ちてきたような気がするくらい光った場所があった。
おどろいてみんなで見ていると光はすぐにおさまった。
「びっくりしたねー!お星様落っこちちゃったのかな?」
ポポの言葉に笑いながら光った場所を見ていると、お母さんが走り出した。
ぼくたちも後を追うと、さっきお母さんが言っていた薬草が生えていた。
「あった…!これでお父さんの病気がなおるわ!!」
お母さんがすごく喜んでいた。
ずっと探していたのに見つけられなかった、奇跡だわって言っている。
「きっとふたりが流れ星にお願いしてくれたからみつかったのね!」
ぼくとポポとお母さんは顔を見合わせた。
そしてみんなで空に向かってこう言った。
「流れ星さんありがとう!!」
ぼくとポポとお母さんはまた手を繋いで帰った。
数日後、薬草のおかげでお父さんはすっかり元気になった。
でもまだお仕事には行けそうにない。
「お母さんゆっくり休めないね…」
ポポの言葉にお母さんは言った。
「お父さんが元気になったからお母さんは前より休めてるわよ!ふたりが流れ星にお願いしてくれたおかげね!」
ぼくとポポは顔を見合わせた。
そしてふたりでへにゃっと笑った。
はじめての小説を読んでいただきありがとうございました。