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5.スーパーアンデッドです

「ん、んぅ……?」

「目が覚めましたか?」


 ほぼ丸一日――眠りについていたセシリアが、ようやく目を覚ましました。

 眠そうな目をこすりながら、彼女は私の方を見ると、


「エルティお姉ちゃん……?」

「はい、そうですよ」

「……っ、エ、エルティさん、おはよう!」


 慌てた様子で身体を起こして、言い直しました。

 昨日から少し、気になっていたことではあります。


「別に昔みたいに『エルティお姉ちゃん』、と呼んでくれてもいいのですよ?」

「! そ、それは、えっと、なんて言うか……恥ずかしい」


 視線を逸らして、セシリアは素直に答えてくれます。


「そんな恥ずかしいなんてことはないと思うのですけれど」

「だ、だって! 一応、わたしの方が年上だし……。どちらかと言えば、お姉ちゃんになるのはわたしの方なんだから」


 わたしが死んだのは十六歳で、その時から三年が経過しています――二つほど年下だった彼女も、すでに私より一つ年上です。

 確かに年齢的にも、肉体的にも彼女の方が上になってしまったのは違いないでしょう。けれど、


「年齢が上になったって、身体が大きくなったって、私はセシリアのこと、幼馴染で可愛い妹のように思っていますよ」

「うっ、そ、そういうこと、面と向かって言わないでよ……」


 顔を赤くして、恥ずかしそうに俯くセシリア。――可愛いのは間違いないですね。


「さて、冗談はこれくらいにして……身体の調子はどうですか?」

「ん、おかげ様でだいぶ良くなったよ」

「それはいいことです。これからは、疲れを残さないようにしっかり寝るように」

「うん、分かった」


 私の言葉には、素直に従って頷いてくれます。

 やはり、姿や性格が変わっていても、セシリアは私の知るセシリアのようでした。

 色々と話すべきことはありますが、まずは彼女が寝ている間に試した結果の報告を先にしてしまいましょう。


「そう言えば、あなたが寝ている間に日光を浴びてみたのですが――」

「!? そ、外に出たの!?」


 ガバッと私の両肩を掴み、言葉を遮ってセシリアが動揺した様子を見せました。


「か、身体に異常は、ない……? え、だって、外に出るなんて、あ、暗い時間に……?」

「明るい時間です。あと、外には出ていません。そこの窓から浴びただけですよ」

「浴びただけって、だ、ダメだよ、そんなの! エルティさんはまだアンデッドとしても成りたてで、最悪の場合、死んじゃうかもしれないんだよ!?」


 少し怒ったような表情でいうセシリアですが、すでに『死んでいる』と言う事実で訂正すると、さすがに怒られてしまうでしょうか。

 私は小さく咳払いをして話を続けます。


「まずは落ち着いて、私の話を聞いてください」

「う、うん」

「太陽の光を浴びた結果ですが、私の身体には何も異常は見られませんでした」

「……? え、アンデッドなのに? 高位のアンデッドなら、そりゃすぐには影響出ないだろうけれど……」

「やはり、あなたの認識もそうですか。さすがに私がそんなすごいアンデッドになったわけではないと思ってですね、浄化の魔法も使ってみたんです」

「……!? な、何を――」

「話は最後まで聞くこと」


 ピシャリ、と言い放つと、何か言いたそうな表情をしながらも、セシリアは押し黙りました。相変わらず、素直でいい子ですね。


「結論から申し上げると、私に浄化の魔法は効きませんでした」

「え、それって、どういう……?」

「あくまで仮説ではありますが、私はアンデッドとして上位の存在――というわけではありませんが、生前は『聖女』と呼ばれた存在ではあります。そんな人間がアンデッドになった、という事例を私は聞いたことがありませんので、まあそういうことなのでは、と」

「……つまり、聖女がアンデッドになると、アンデッドの弱点を克服できる、と?」

「理解が早くて助かります。早い話、今の私はスーパーアンデッドということです」


 腰に手を当てて、胸を張って宣言をしました。

 ふふんっ、と冗談めかして言ったつもりだったのですが、


「え、エルティお姉ちゃんすごい……!」


 何故か、目を輝かせてセシリアは私を見上げていました。

 私は別にすごくないのですが、一先ずセシリアが納得してくれて、喜んでくれたのならそれでよしとしましょう。

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