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第十四話 豚さんは市松人形

(はぁ~~湯たんぽが恋しい……)


 あのあとお風呂から上がったら、すぐごはんを食べて寝てしまった。メチャクチャ疲れてたからね。ちなみに寝るときはチグさんと一緒に布団にインだ。抱き心地がいいんだよ。本当に。まあ目が覚めたら既にいないけど。


「おはようございます」

「おはよう」


 あれ? オドロさんが居間でお茶を啜っている。いやー美人さんはお茶を飲むだけで絵になるね。横顔がまた美しいんだよ。じゃなくて


「今日の朝ごはんは、もしかしてなしですか?」

「ううん。あるよ。チグが作ってるよ」


 え、チグさんって朝ごはん作れるの? 確かに土間から音がするけれど。豚さんだよ?

 とりあえず挨拶するか。


「チグさん、おはようございま…す?」

「あ、ショウ様。お早う御座います」


 人だ。人がいるぞ。美少女だ。黒髪ショートボブでお目々パッチリ。市松人形のような感じのかわいい子だ。薄いピンク色の生地に朝顔みたいな花柄の着物を着ているのがよく似合っている。小柄なのに胸でかいな……。あ、草履(ぞうり)じゃなくて下駄だ。


 それはそれとして、わたしのかわいい豚さんはどこにいった?


「私で御座いますよ」

「え、チグさんって人型? の神様だったのですか?」

「いえ、本来は獣の姿ですが、オドロ様に朝餉(あさげ)を作ってもらうなどとても畏れ多いので、自分で作るために人化しているのです」

「あ、そうでしたか……」


 その畏れ多い人に毎食作ってもらっていたわたしって……。


「気にしなくていいよー」


 さようですか。いつもありがとうございます。

 

「あ、チグさん、昨日はありがとうございました。おかげ様で快眠できました」

「いえ、あの程度のことで宜しければ。全く構いませんよ。それと私のことはチグとお呼び下さい。敬語も不要です」

「そうですか? でも私のほうが新参者ですよね?」


「本人がそうして欲しいって言ってるんだから、変に畏まらなくていいよ」


「オドロ様の仰られる通りです。それにショウ様はオドロ様の神子様であられますから、私などより上で御座います」


 そうなのか?神子ってのもよくわからないけど、まあいいか


「わかった。じゃあ改めてよろしくね、チグ」

「はい。宜しくお願い致します」


 よし、顔洗って水汲みだ。



 * * *



「「「いただきます」」」


 朝ごはんはいつもどおりご飯と味噌汁と漬物だね。味噌汁は白菜がメインだ。柔らかくなっていておいしい。チグにも一緒にごはんを食べてもらっている。人型のままだ。

 朝はこれでいいけれど、たまには昼とか夜に肉食べたいかな。


「昼に何か狩ってきましょうか? 夜には新鮮な肉が食べられますよ。残った部分は干し肉にでもすれば良いですし」

「あ、いいの? 久しぶりに肉が食べたいよ」

「オドロ様、宜しいですよね?」

「うん。別に構わないよ」


 わーい! やったね。お肉~。お肉~。今日の鍛錬頑張れそうだ。


「お肉で鍛錬頑張れるのなら毎日でも用意しようか?」

「いや、さすがに毎日はいいです……。でもたまには食べたいです」

「じゃあ次は心力が安定したときのお祝いだね」

「えー……」



 ――



「そうそう、今日からチグにも鍛錬つけてもらうよ」


 ごはんのあとにお茶で一服していたら、オドロさんが話しを切り出してきた。


「え! また鬼ごっこですか!?」

「それもあるけど、また別のことだよ。生力の使い方とか」


 それ"も"あるのね……。


「ご一緒出来るのは半年程度かと思いますが、僭越ながら、その間ショウ様に手ほどきをさせて頂きます。どうぞ宜しくお願い致します」


 おぉ、三指ついてきたよ。そこまでする必要ないのに……。おはようと言ったときも礼してきたけど、チグは丁寧だね。わたしも手をついて返礼だ。


「ありがとう。こちらこそよろしく」

「別にチグの真似することないよ。この子は丁寧すぎるだけだから」

「そうですか……」

「神子様に対して当然の礼儀で御座います」

「あ、その神子っていうの聞きたかったんだ。あと"遣い"と神域っていうのも」


「神子といいますのは、神の御子、または神が自身の後継とするもののことです。ショウ様はオドロ様の継子として創造されておりますので、神子様と呼ばせて頂いております」


 なるほど。後継ね。気が重い……。


「"遣い"といいますのは、神が自分の手足として使う、謂わば駒のような存在ですね。例えば他の<(うつし)>の神との連絡に使ったり、自身が複数の<現>を管理している場合に、そのうちの幾つかを任せたり、という風に」


「家臣みたいなものかな?低い格の神は、高い格の神に仕えている、みたいな」

「そのように捉えて頂いても問題ないかと。ただ、"遣い"は必ずしも神とは限りません。亜神や精霊など色々おります」


「あ、そうなんだ。チグは神様でいいのかな? 勝手に神様と思っていたけど」

「はい。私は神で間違いありません。オドロ様の"遣い"をしているのは、全員神で御座いますよ」


 "全員"神って、なんか言葉すごいね。いつか私もその"全員"と会えるのだろうか。


「そう、ですね……。まあ、いつかは……」


 言い淀まれちゃったよ……。シクシク。


「も、申し訳御座いません。なんと言ったらいいか……」

「会えるよ」

「オ、オドロ様……」

「大丈夫だって。<(かくり)>を管理すれば必ず全員に会うことになるから」


 そういうものなのか。しかしいつになることやら……。


「……」


「あ、ごめん。続けて神域っていうの教えてもらえる?」

「……神域といいますのは、神が<現>に顕現した際に自身の社、つまり家とするところです。基本的にその神の力が最も大きく使える場所になります」


「家ってここじゃないの?」

「確かにここは家ではありますが、仮住まいといったほうが正しいかと。オドロ様の御力はあの洞穴が最も大きいので、あそこが神域なのは間違いありません」


 オドロさんを見る


「あそこだとショウが保たないからね」


 それもそうか。ということはわたしがいるせいでオドロさんは本当の家で過ごせないのか……。


「気にすることないよ。あそこだとまともに会話もできなくなるでしょ」


 確かに。


「そういえばチグはあの洞穴の中、神域には入れないの? 入口近くなら大丈夫みたいなこと言ってたけど」

「入れません。私ですと力に負けて消失してしまいます」

「なにそれ怖っ! ってことは私はそこそこ力があるの?」

「ううん。ショウは力はないけど私の格があるから入れるんだよ」

「あ、そういうこと……」


 しかし、神域ってとんでもないな。まあ自分のテリトリーだから他の神様には入られないようにするものなのかな。


「質問は終わりで大丈夫かな? そろそろ今日の鍛錬始めるよ」

「あ、大丈夫です。チグ、ありがとうね」

「いえ、とんでも御座いません。私でお答え出来ることでしたら、何でも聞いて頂いて構いませんので」


 チグは優しいなあ。オドロさんも鍛錬以外は優しいけど、鍛錬が厳しすぎる。

 ん? チグも鬼ごっこの件を考えれば鍛錬厳しいんじゃない? 鬱だ……。


「そんなこと考えてる暇あるんだったら大丈夫でしょ。ほら、準備したら行くよ」

「はーい……」


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