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ゼロ世界の語り手と住人  作者: 椅稲 滴
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 ピピッと縮んだ音がして、表示を見ると、Suicaの残高は2000円と少しだった。1000円を切っていてもおかしくないと思っていたから、これは僕には意外なことだった。僕は目が悪いから、あるいは2と1を見間違えたのかもしれない。

 電子版の表示では、次の電車は1番線の列車のはずだった。これも、見間違いでないといいんだけど。

 ホームの端に出る階段を選んで降りたが、ホームには1人もいなかった。腕時計によると時刻は一時前なので、たぶんそのせいだろう。

 リュックの中には1冊か2冊か3冊の本が入っていたはずだけど、チャックを開けただけで結局何も取り出さなかった。僕は、ぼーっとしている方を選んだんだと思う。気がついたら目の前には電車がやってきて停まっていた。近寄ったらドアが開いたので乗ったが、やはり車内には誰もいなかった。2人がけの席に座って壁に寄りかかり、目を閉じた。

 僕の頭の中にあったのは家事の情景だ。何かの小説のワンシーンだろうか? でも、場面は僕の家だった。そうだ、シュミレーションしていた、自分の家が火事になったとき、逃げ出せるかどうか。火元は2階のキッチン兼リビングで、僕はなぜかその一室にいた?

 ガヤガヤしたので目をうっすらと開けてみると、けっこう混んでいた。たぶん、僕が降りる1個前の駅だ。ほとんど一瞬目を閉じて開けたのは、「藤沢、藤沢」というアナウンスが聞こえたからだ。慌ててリュックを掴んで車内を出ると、ほどなくしてドアは閉まった。振り返ったが、目に映ったのは僕の乗った車両ではなくて、僕と同じ車両に乗り合わせた人々のことは、もう分からなかった。

 さすがに藤沢駅には人がいて、階段付近には下り列車を待つ列がぶつりぶつりとあった。

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