けんか
けんかの原因など、他人が聞けば箸にも棒にもかからないようなもの。
けれど、けんかの最中は往々にしてヒートアップしすぎて納めどころのない状態になってしまうものだ。
「え? プリン?」
仕事から帰宅した一平は新婚ほやほやの妻・優が取り出してきたクリーム色の紙袋を見て、嬉しそうに笑顔を見せた。けれど紙袋に書かれたロゴに気がついて少し眉をひそめた。
紙袋に書いてあるロゴと店名は、最近何度かテレビで取り上げられている所謂「隠れた名店」と呼ばれる店だ。優と一緒に夜見ていたトーク番組でも、パーソナリティーのタレントが心底感心したように「美味しい」とため息を漏らしていて、一平も一度食べてみたいとは思っていた。
正直プリンは好物だ。それもとろとろ系よりはしっかりと弾力のある固めのプリン派だ。フルーツや生クリームと一緒にガラスの器に美しく盛りつけられたプリン・ア・ラ・モードなんか出された日にはテンションがだだ上がりになる自信がある。一平はそれなりに酒もたしなむが甘いものにも目がない。
そして今回優が入手してきたらしいそれは、昔ながら固めのプリン。濃厚な卵と香り高いバニラの風味が群を抜いていると評判だ。
だというのに眉をひそめてしまったのは、その店が「隠れた」と言われるだけあって実に見つけにくい場所にあるからだ。優は決して方向音痴ではないが、一度ネットで調べた限りではそう易々とたどり着けるとは思えない場所だった。
それに繁華街の奥の奥にある店なのだ。歓楽街、いわゆる風俗店が立ち並ぶエリアの入り口にあって、おまけに一本通りを外れればいわゆるホテル街もあったりする。
つまり、お世辞にも治安のいい場所とは言えない。
「――あんまりプリンの気分じゃなかった?」
一平がいつものように手放しでうれしそうな顔を見せなかったからか、優の表情がしぼむ。いや、そんな顔をさせたいわけじゃない。一平だってもちろんうれしい。手放しでうれしい。優がわざわざ時間を割いて一平が食べたがっていたプリンを探しに行ってくれたのだ。
けれどプリンと優の身の安全とを天秤にかけたら、結果なんてわかりきったものだ。
「いや、嬉しいよ、食べたかったけどさ――この店があるのって、あんまり治安のいいところじゃないだろ? そんなところに優ひとりで行って、何かあったら」
「大丈夫だよ、危なかったら逃げちゃうもん」
テレポートで、か。
まあ優はれっきとした超能力者だ。普通の人ではそうそう捕らえることもできないだろう。
けれど大事な大事な優が危ない場所に近寄ることを心配するのは、新婚の夫としては――いや、結婚前だったとしても当然だろう。それに。
「優、前科あるだろ?」
「前科――あう」
あった。確かに超能力者でも「14」の人間でもない普通の人(ただしヤのつくご職業)に誘拐されたことが。R.S.Pの関係者に巻き込まれ、一緒に誘拐されてえらい騒ぎになった記憶はまだまだ風化しそうにない(「山猫は雑踏を走る」参照)。
「なのにひとりでそんな場所に近づいて欲しくないと」
「あ、ひとりじゃないよ。仕事帰りに山内さんが一緒に行ってくれて」
「――山内さん」
一平は自分の頭の中がすうっと冷えていくのを感じた。山内、というのは優の勤務先の上司に当たる人で、優からはよく話を聞いている。優によると勤め始めたばかりの頃に優の指導役だったそうで、すっかり仕事に慣れた今も相談に乗ったりしてくれている、頼りになる先輩とのこと。優いわく人当たりもよく、仕事にもそつがないイケメン――つまり男、だ。一平は内心それが以前から気に入らなかった。
優にその気はないだろうが、聞いているだけでもこの山内という先輩は優を狙っているんじゃないだろうかと前々から思っていたのだ。その山内氏と? 歓楽街、おまけにホテル街もほど近い場所に一緒に行った?
気がついたときには言葉が一平の口を突いて出てしまっていた。
「優、もうちょっと危機感持とうよ。頼りになる先輩っつっても男は男だろ」
「――なにそれ」
低い声で返事が返ってきて一平ははっとした。さすがに今のはまずいだろう。
「山内さん、あの店に行ったことがあるって言うから今日お願いして案内してもらったの。山内さんが一緒に行こうって言ってきたわけじゃないよ。なのに山内さんのこと疑うの?」
「あの、」
「山内さんは頼りになる先輩で、お世話になってる人なの。それを会ったこともないのに、一平さん失礼だよ」
言い過ぎたから謝ろうと思っていた気持ちにまた新しく火が熾る。優はなんだってこんなに山内氏の肩を持つんだ。言いようのないいやな気持ちが胸の奥に広がる。心の奥底にがちっと堅牢な塊ができて、それがどんどん大きくなっていくような気がする。
おもしろくない。実におもしろくない。
「ふうん。頼りになる先輩だから、なあ」
「一平さん?」
「ただの頼りになる先輩なら、女の子連れて二人で歓楽街の店に行くなんて誤解を招きそうな真似はしないだろ?」
「――何よ、それじゃ一平さんは山内さんがそんな人だってわかるっていうの?」
「男なんてな、みぃんな腹の底じゃそんなこと考えてる生き物なんだよ」
「じゃあ一平さんも同類じゃない!」
「あーはいはいそうだよ! そうですよ!」
「――!」
そのままお互いにらみ合って沈黙が訪れる。普段ならこのあたりで泣いてしまいそうな優だが、涙をこぼすことなくただじっと一平をにらみつけている。
おかげでほんのわずかに冷静さを取り戻した一平だが、それでも気持ちは収まらなかった。
だめだ、このままじゃもっと心ないことを口にしてしまいそうだ。
「――ちょっと頭冷やしてくる」
一平はぼそりとつぶやいてそのまま優に背を向けた。
優の顔は見られなかった。絶対に自分がひどい顔をしているのがわかっているから。下を向いたまま、自分の足がさっき脱いだばかりの革靴を履くのを他人事のように眺め、それから玄関の扉をくぐって後ろ手に閉める。マンションの冷たい金属の扉ががちゃんと無機質な音を立てて廊下に響いた。
出てきたのはいいが、目的があるわけではないので、とりあえず足の向くままにしばらく歩き、結局自宅の最寄駅方面へと出た。
駅ビルで時間を潰そうかとも思ったが、たどり着いてからそう時間を置かずに閉店時間になってしまった。仕方なく駅ビルを出て飲み屋街に向かう。
飲み屋街はいくつもある看板の電飾でぎらぎらと活力的で眩しいほどだ。
油で汚れた換気扇から立ちのぼる煙は焼き鳥の香ばしいにおいをまき散らし、人の話し声や笑い声が音の波となって耳に入り込む。すれ違う赤い顔の人達は一様にぷんとアルコールのにおいを纏い、気楽に笑っているように見えた。
一杯飲もうかと思ってこちらへ足を向けたのだが、あの陽気な空気の中に入り込む気にどうしてもなれない。
しかしそろそろ空腹だ。あまり気分ではないがこのままでは空腹でますます落ち込みに拍車をかけてしまいそうだ。軽く何か食べるか、と一平は飲み屋街の中程にあるよく行く飲み屋ののれんをくぐった。
それほど広くない居酒屋のカウンターに腰を落ち着け、浅漬けと豚の角煮を注文した。すぐに届いたビールを煽ると、空きっ腹にかあっとアルコールが効く。
「ふう」
よく冷えたビールで少し気持ちが落ち着いた。一平はジョッキに手を添えたまま金色の液体の中をシュワシュワと立ちのぼってくる泡の連なりを眺める。単調だが変化のある動きを見ているうちにさっきの応酬が脳裏に浮かんできた。
(うーん……やっぱり言い過ぎた、かな)
優のことを心配していただけなのだ。人と違う能力があったとしても、危険な場所に行く、それも優に好意を持っているかもしれない男と、となったら止めるのは当たり前だ。
とはいえ優はテレパシストでもあるのだから、その山内先輩とやらが悪意を持っていれば気がつくのではないだろうか。あるいはそれがわかっていたからやすやすとついていったのか?
いや、心を覗く力を持っていても優が軽々と能力を使うとは思えないので、そういうわけではないのか……?
(でも、俺が気に入らなかったとしても、優が信頼してる人を面と向かって悪く言うのはまずかったなあ)
たしかにずいぶんひどいことを言った気がする。腹が立っていたとはいえ、あんなふうに声を荒げる気なんかなかったのに。
優とけんかしたときとは違うベクトルで気持ちが下降線を辿り始めた。
一平の背後に並んだテーブル席はすでに満席で、わいわいと楽しそうな会話が響いてくる。会社帰りのサラリーマンや近所のおじちゃんおばちゃん連中はほどよく出来上がった紅い頬で豪快に笑ってる。そんな中ひとりだけこんな鬱屈した心持ちで座っているのがちょっとばかり辛い。でも料理を頼んでしまったから、食べ終わったら店を出よう。
(とはいえ、家に帰りづらいってのもあるんだよなあ……)
そのタイミングで供された角煮に辛子をつけながら思わずため息をついてしまう一平だった。一口含んだ途端に強烈な辛子のパンチが効く。それをビールで流し込んでいたら――
「あれ? 一平くん」
声をかけられた。振り向くと見知った男が店に入ってきたところだった。
一分の隙もないぴしっとしたスーツ姿。どこをどう見てもできるサラリーマンの代表・高木真樹人氏だ。
彼は優の親友・南美の夫君。そのつながりで今や一平ともいい飲み友達となっている。
「真樹さん」
真樹人はカウンター席に座る一平の隣の椅子を引き、カウンターに並んで座る。すぐにおしぼりと突き出しが供され、真樹人はハイボールを頼んだ。
「なんだ、妙に浮かない顔してるな」
「んなことないよ」
「いやいや、何て言うかな――へこんでる感じ」
「うっ」
「そうだな、仕事で――って感じじゃないな。優ちゃんとけんかでもした? あっ、図星か」
「真樹さん……実は超能力者なんじゃ」
「だって一平くん、わかりやすいからなあ」
真樹人がハイボールをぐいっとあおる。
「ほら、話してみなよ。何でけんかになったのか。それにしても一平くん達がけんかなんて珍しい」
ポテトサラダを注文しながら真樹人がカウンターに突っ伏した一平の背中をぽんぽんと叩いた。
真樹人はさすが会社の営業成績トップだけあって、人の話を聞くのがうまい。ついついリードされてぽろりと話してしまう。
「なるほどねえ、確かに男としては面白くないところだなあ」
「でしょ? ムカッと来ちゃって。でもやっぱまずかったかなあ」
「ふうん、ちなみにどこがまずかったと思ってるわけ?」
「その山内って男のこと知りもしないのに頭ごなしに文句言っちゃったことと――ああ、そういえば折角プリン買ってきてくれたのに、優にお礼ひとつ言ってないや、俺」
あー……と一平は再びカウンターに突っ伏す。
俺、結婚したってのに余裕なさすぎ、というつぶやきが一枚板のカウンターに吸い込まれた。
「でもやっぱり優が他の男と出かけるなんて、やだ」
「そりゃそうだよ。俺だってそう思う」
「真樹さんも? 南美ちゃんのこと大事に囲い込んでる感じだからもっと余裕しゃくしゃくかと思ってた。家庭円満の秘訣、とかある?」
「うん――そうだな、格好つけすぎないことが肝要だと思ってるよ」
真樹人と南美は一平と優が結婚するより早く結婚している。
「どういうこと?」
「他人同志が家族になって一緒に住むんだから、気になっちゃうことってどうしても出てくるんだよ。それをきちんと二人で話し合って妥協点を探していくのがいいと俺は思ってるわけ。でも一平くん達の場合、相手に遠慮して話さずに我慢しちゃいそうだからなあ」
ちょっとばかり思い当たるフシがある。
「だからさ、俺は大丈夫なんて格好つけてないで、キチッと話し合ったほうがいい、と。あくまで俺の考えだけどね」
「格好つけ……かぁ。そうなのかなあ」
「ちょっと言葉が悪かったかな」
「そんなことないよ。図星かも」
真樹人の注文したポテトサラダが来て、少しだけ会話が途切れた。
耳に届く店のBGMは昭和の歌謡曲。あまり興味はないのに耳にしたことのあるような曲ばかり。泥臭くどこか悲哀を秘めた歌詞に揺さぶられる。
「あれかなあ、俺、心が狭いのかなあ……完全に嫉妬心だよな、これ」
「そんなふうに素直に反省しちゃうあたりが、やっぱりいい奴だよ。一平くんは」
「おだてても何も出ないっすよ――大将、浦霞。ぐい呑み二つで」
「とか言いながら奢ろうとしてるし」
顔を上げた一平と、空になったハイボールのジョッキを店員に渡しながら笑う真樹人の目があってどちらともなくクスリと笑った。
「真樹さんごめん。愚痴聞いてもらっちゃって」
「いつでもどうぞ。無事仲直りできるように祈ってるよ」
ガラスのぐい呑みによく冷えた日本酒を注いで軽く乾杯する。チン、と涼やかな切子の音が気持ちを持ち上げてくれる。
「はぁ。旨い――真樹さん、真樹さんなら南美ちゃんと同じようなことがあったらどうする?」
「俺なら間違いなく相手の男に退場願うね。社会的に」
「社会的に」
「そうだなあ、まずは相手の身辺調査から。便利だよねえSNSって」
「SNS」
「うん、SNSって思った以上に情報ってだだ漏れなわけ。で、うまく攻略ポイント見つけてね、外壁からじわじわ情報集めといて、んで最後に一気に」
真樹人の右手が肩くらいの高さから何かを押しつぶすようにぺしゃん、とカウンターに降ろされる。
「うわ怖っ」
話しながらにこにこと笑顔の真樹人が怖い。
今の話とちょっと齟齬を感じるが、そこは突っ込んではいけないと何かがストップをかける。
自分も大概だがこの男も相当妻に対する執着心がえぐいと再認識させられる一平だった。
ほどなくして真樹人との飲み会は解散、店の前で真樹人と別れて一平は自宅に向かって歩き出した。
11月に入ったばかりの夜はもう肌寒いを通り越しているが、おかげですっかり頭も冷えている。
時間はもう11時、優は寝ているだろうか。もし起きていてくれたならすぐ謝ろう。もし寝ていたら明日の朝一番に。
決心が鈍らないように、革靴のまま走り出した。
人気の少ない夜の道に靴音が妙に大きく響いた。
よかった、玄関にチェーンをかけられてはいない。一平は胸をなでおろした。まあ、かけてあってもテレポートすれば入れてしまうので一平を閉め出すことはできないが、もしチェーンがかけてあったらそれだけ優が怒っているということだろうから、一先ず無事ドアチェーンが開いていたことに安堵した。
「ただいま~……」
小さく声に出しながら靴を脱ぎ部屋に上がる。そして玄関に灯りがつけてあったことに気がついた。
優が一平を締め出そうとしていない証拠が一つずつ積み重なり、ちょっと胸の奥が暖かくなる。
電気のスイッチを押してぱっと明るくなったリビングを見回した。入ってすぐ左は優の城・キッチン。キッチンの更に奥にはダイニングテーブルがあるが、リビング入り口からはキッチンの壁に隠れて見えない構造だ。正面のソファは結婚してから二人で選んだ三人がけ。右の壁面には大型のテレビが据え付けられている。正面突き当りはベランダに通じる掃出し窓があり、しっかりとカーテンが閉めてある。そのどこにも人の気配はない。
やっぱり優は寝てしまったのだろう。着ていたスーツのジャケットをソファーに放り投げ、水を飲もうとキッチンへ向かう。
水を飲みながらダイニングテーブルを見ると、一平の分の夕食がラップをかけて用意されていた。
そしておかずと一緒に置かれていたのは、プリン。それも件のプリンではなく、手作りプリンだ。一平が出ていってから作ったのだろう、触れるとまだほんのり温かい。
そのプリンのカップを文鎮代わりにメモが置いてあった。
『ごめんね』
とたんに一平は崩れ落ちそうになった。
許す。許します。イヤ違う、逆に許して下さい。
一平はあっさりと手のひらを返した。どこの世界に優に逆らえる一平がいるというのだろう。無理だ。
認めます。山内氏に嫉妬しました。いや、あれは嫉妬どころかただの独占欲だ。
いても立ってもいられなくなって優を探す。バスルームもトイレも灯りがついていない、ということはもう寝てしまったのだろう。一平は寝室のドアを注意深く静かに開けた。
寝室に入ると目の前に二つベッドが並んでいる。ちょうどベッドの足元がドア側を向く形だ。ベッドとベッドの間には小さなサイドテーブルがあり、その上に飾られているステンドガラスのランプシェードは今は灯りが落ちている。廊下の照明から伸びる光を頼りに一平は迷わず優のベッドへ向かい――
「あれ? いない」
優のベッドは整えられたまま、使った様子はない。一平は慌てた。まさか優は自分を探しに外へ行ったんじゃないだろうか。
こんな遅い時間に?
むくむくと不安が膨らんでくる。山内氏の件の比ではなく心配だ。駅前は賑やかだがマンションのあたりは比較的人通りも少なく閑静な場所なので、女の子ひとりでなんて心配するなと言う方が無理というものだ。
取るものも取りあえず探しに行こうと決め、寝室を出ようとしてベッドに背を向けた。
もぞり
出て行こうとしたまさにその時、背後のベッドに気配を感じて一平は足を止めた。気配は優のベッドではなく、もう一つのベッドからだ。
つまり、一平のベッド。
一平はそっと自分のベッドへ近づいた。暗くてわからなかったが、花柄の地模様が入ったベージュのベッドスプレッドがこんもりと膨らんでいる。
布団をそっとめくると、長くて柔らかい髪が見える。丸くなって優が眠っていた。
わざわざ一平のベッドで寝ているのは何故だろう。呆然と、けれどほっとして優を見つめながら一平は首をひねった。
ふとプリンと一緒に置いてあった「ごめんね」のメモが頭に浮かぶ。優は自分に対して謝っている、ということは、一平が出ている間に優も冷静になったということだろう。こんなふうにけんかしたことなかったし、それで不安になって、一平の匂いの残るここに来て、そのまま寝てしまって――
一平は今度こそ膝から崩れ落ちた。
かわいい。かわいすぎる。食べちゃいたいくらいかわいい。結婚してますますかわいくなる嫁は自分を一体どうしたいのだろう。やばい。このままだと悶え死ぬ。優を愛おしくてたまらない強烈な衝動が一平を揺さぶる。
今すぐ優を抱きしめたいけれど、よく眠っている優を叩き起こすのはためらわれるし、起こしてしまったら抱きしめるだけで済まないどころか朝まで寝かせられない自信がある。
もう一度頭を冷やそう。いっそのことリビングで寝ようか。
そう思ってリビングへ引き返そうとしたが、これで朝起きて自分がベッドにいなかったら優はますます不安になるんじゃないか?
そんな考えも頭をもたげ、ぐるんぐるん悩んだ挙げ句、一平は優がすやすやと眠るベッドの脇で悶えて眠れない夜を過ごすのだった。




