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廃人による最終決戦(前編)

「縮地」

 早速距離を詰めてきたRKは、移動姿勢から瞬時に攻撃姿勢に移り変わり、次の瞬間にはいくつもの剣撃が迫ってきていた。

 一つ以外は全てフェイントだ。だがそれを見抜く力は私にはない。

 だから、正々堂々斬り合い、全てを防ぐ事にした。

 その考えを読まれたのか、彼はフェイントを辞め、先程までよりも早い剣技を繰り出した。

 甲高い金属音だけが無機質な空間に響き渡る。

「フッ……ハハハハ! 楽しいな! こんなに楽しいのは久しぶり……だ!」

 戦っている最中も彼は成長している。刀を振るたびに、その攻撃は鋭く、速く、重くなっている。

 斬り合い始めた時点で互角だった。今は防ぐので手一杯だ。

「あっ!」

 一太刀防ぎ損なってしまった。咄嗟に体をひねる事によって直撃は免れだけど、これはつまりもう単純な斬り合いでは勝てない事を示している。

 あと少し……あと少しなのに、このままでは押し負けてしまう。

「火力特化のお前()なら一撃で決まると思ってたが、流石に一撃は耐えるか……だが縮地!」

 また同じ攻撃か。正直これが一番辛い。

 斬り合いが始まると、彼の勢いに押し負け、私は後退りをしながら応戦する事になった。

 それでもなお強くなる刀に追いつかなくなり、受け流しに失敗して自分の刀を弾かれてしまった。次の一撃は避けられない。

「くらえ!」

 彼は一歩踏み込むと瞬時に刀を振った。

「甘く見ないでください」

 私は腕と胸ぐらを掴み、ちょうど柔道の構えに似た姿勢を取った。続いて踏み込んだ足を内側から救い上げ、内股を繰り出した。

 受け身を取り忘れたRKだが、ほとんどダメージがない。ゲーム内で柔道なんか披露したところであまり意味はない。

 意味があるのは、それによって時間が稼げた事だ。

「……おい。それはなんだ」

 彼の怒気の混ざった声は、私の前に現れた1人のプレイヤーに向けられていた。

「一対一の戦いでそいつを倒すから意味があるんだ……なのに、なんで邪魔するんだよ! 高橋!」

 私とRKの間に現れたのは高橋さんだった。

「この空間に高橋さんだけ入れるプログラムを作ったんですよ」

「そういう事だRK。君の計画はすでに破綻した」

 RKは泣きながら地団駄を踏んだり、頭を掻き毟っていた。余程悔しくて堪らないらしい。

「畜生……チクショウチクショウ! 臆病風にでも吹かれたのか? なぜタイマンができない⁉︎」

『いいえ。私はしっかり一対一で戦いますよ』

 今のはゲーム内の発言ではない。現実での発言だ。

 それに気付いたRK……いや、川口涼太(かわぐちりょうた)はゲーム機から意識を取り戻し、現実で私と対峙した。

「なるほどな。お得意のデータ覗きか」

 データを覗けば、それを操作している人や場所が特定できる。そうして本社のデバッグ用のゲーム機で操作していると分かった私は、道中でナイフを買ってここまでやってきたと言うわけだ。

「お前は勘違いしているかも知れないが、このゲーム機は特殊でな、現実に俺の意識が有ってもキャラ操作は可能なんだよ。だから、高橋なんて雑魚じゃお前のデータを倒せない」

「知ってますよ。その機体を設計したのが誰だか、分かってますか?」

 軽く話を済ませると、私はナイフで攻撃を開始した。

 それと同時に、ゲーム内の高橋さんも攻撃を開始した。

 私の繰り出した突きは、軽く避けられてそのまま合気道の要領で投げられてしまった。

「現実とゲーム。両方で責めれば勝てると思ったか? どっちも実力に差がありすぎるんだよ。引きこもってばかりの女と、ジムに通って鍛えている男。ただの一プレイヤーと、ゲームの制作者のチートデータ。やる前から分かってただろ」

 受け身を取り損ねてしまい、息も絶え絶えな私だけど、全く負ける気はしなかった。

「はぁ……はぁ……ゲームに、集中する事……を、お勧めします」

 彼は鼻で笑いながら余裕綽々といった風にゲーム画面に意識を逸らした。

「なっ! なぜ高橋の攻撃が効いているんだ!」

「あなたの狙いが平等な条件で戦う事って分かった瞬間閃いたんですよ。私の持っている能力低下装備さえつければももや高橋さんでも勝てるんじゃないかって」

 メイドさんから貰った装備のおかげだ。あれが無ければ、私のチートじみたデータと高橋さんを戦わせてしまうところだった。

「ステータス変更や高橋さんを殺す時間は与えませんよ」

 ナイフをよりしっかり握りしめ、川口に切りかかった。

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