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ももによる困惑

 逃げ遅れていないなら、もうギルドマスターはいないだろうなぁ。

 とりあえず、抱えていたryuutaを下ろして、縄を解いた。

 さっきは眠らせてしまったから、眠りの状態異常も解除してあげると、彼はまるで一時停止を解除したように刀も握っていない腕を振り回した。

「おうらッ!……ってあれ? 敵は?」

「んー? みーんないなくなっちゃったー。とりあえずー、ギルドマスターを探そうねー」

「あぁ。こっからは別れて探した方が良さそうだな」

 そう言って、私は同時に、同じ方向に歩き始めた。

 さっきから気になっていたのだけど、このギルド内からは声が聞こえていた。あんな化け物が外では暴れているというのに、内輪揉めでもしているのか、お互いに大声で喚きあっている。

 お互いにそれが気になっていたようで、同じ方向に進んでいた。

 声は近づくにつれ、大体の内容が分かるようになっていった。

「アンブラァがすぐそこまで来ているんだ! 俺が死んだら誰が指揮をするんだ!」

「落ち着いてください! あなたがここを離れては末端の兵士に声が届かなくなりますし、そもそも出入り口は塞がれています! それにあなたは復活できるじゃないですか!」

 そんな会話だ。会話の流れを聞くに、逃げようとしている方がギルドマスター……つまりターゲットか。そしてもう一方が無能と言われていた兵士の一人かな?

 本当に無能だなぁ。ボスを最初に逃がさないなんて。それとも恐怖で錯乱しているのかな?

 なんにしても好都合。私達は急いで声の方に走った。

 到着すると、開けっぱなしになっていた扉を身体で塞ぐように、弱そうな兵士が腕を広げていた。

 もう痺れを切らしたギルドマスターらしい人が剣を引き抜いたタイミングで、私達を見つけたようだ。

「……最悪だ。完全に逃げ遅れた。お前が正体不明の侵入者か。全く、今度から護衛はしっかり選ぶとしよう」

 護衛は選ぶ? ああ、今私は兵士の格好だった。だから拷問か何かで裏切ったと思っているのか。

 私は見た目をいつもの服に変えた。

「ごめんねー。君の兵士じゃないんだよねー」

「何もかも手遅れか……お前のせいだぞ!」

 彼は鬱憤を晴らそうと、兵士に剣を振るった。

 だが、兵士は剣を指先でつまみ、簡単に防いで見せた。

「残念ながら、私もあなたの兵士ではありません」

 名前表記や見た目、声がどんどん変わり、その正体があらわになった。

 カメレオンの刻印が入ったマントを翻した彼……いや、彼女は、アンブラァだった。

「聖骸布……! お前がアンブラァだったのか」

 アンブラァがニヤリと笑うと、外に居た巨大な化け物がこちらに向けて何かを投げてきた。

 なんだアレは……迫ってくるにつれて輪郭がはっきりしてくる。

 そして、窓を破壊してそれが入ってきた瞬間に、正体が分かった。それは人だ。5人の気絶した男女が放り込まれてきた。

「タイミングもピッタリです」

 そうして5人がアンブラァの周囲に入った瞬間、動きが止まって消滅した。一人を除いて。

「俺が対策をしていないとでも思ったか? お前の話を聞いた時からアイテム欄は埋めている……! 殺したければ殺せ! 普通に殺されただけなら復活できるからな」

 ギルドマスターだけは消える事なく、その場に残っている。

「し……失敗した……どうしよう、もも」

 私に振られても分からない。作戦も知らないのに、失敗した時の解決方なんて分かるわけがない。

 それよりも、さっきから背後で怒っている存在の方が気掛かりだ。

「もも、お前はいい。敵キャラに選ばれたのだから、何をしたって構わない。だが、そこのアンブラァの偽物(吉田)は許せない。敵キャラに選んでいないのに……僕の掌で遊ばれるのが関の山の一プレイヤーが! 勝手な行為をするんじゃない!」

 鬼の様な表情をしたRKが、吉田を殴り飛ばし、蹴りの連打を加えた。

 やがてHPが0になった彼は、その場から消滅した。かと思うと、すぐにその場に現れた。

 吉田は困惑している。

「お前のリスポーン地点をここに変更した……絶対に逃がさない……! 何度でも殺してやる!」

 半狂乱で顔を真っ赤にしたRKは、馬乗りになって何度も何度も殴り続けている。

 吉田は段々とぐったりして、いつの間にかされるがままになっていた。

「や、やめなさい!」と叫んだアンブラァは走り寄り、地面にアイテムを落とした。

 それと同時にRKも吉田もその場から消えた。

「さっきから色々な事がありすぎでもう理解できないけどー、これで一旦は勝ちなのかなー? RKは消えたしー」

「いえ、どうせ彼は復活しますし、彼に私の協力者(吉田さんと井上さん)がバレてしまったので、実質私の負けですよ……どうしましょう?」

「知らないよー。でもー、とりあえずそいつを殺せばいいんでしょー?」

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