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ももによるギルド侵入

「この上だ……ったはずだ」

 自信のない言葉にこちらまで不安になってくる。

 天井を見上げると、マンホールの蓋のような物が見えた。

「出たらすぐ戦闘になると思った方がいい。なにせ、出る場所はこの世界で最大のギルドの本部の庭だからな」

 そこを落とせば敵の士気が下がるって作戦かな。もしくはそのギルドが指揮をしているのなら、敵を混乱に陥れる事ができるけど、どうなんだろう。

 でも、そんな普通の作戦なら、なんで私に教えてくれないんだろう?

 ……まあいいか。作戦が分かっても何が変わるわけでもない。ただ誘拐すれば終わりだ。

「ところでさー、そのYOSHIDって人はそのギルドに所属しているのー?」

「ああ、そうだな」

「そんなに人が多いならさー、特徴がないと判別できないかもよー」

「ん? ああ、言ってなかったか……特徴としては、そいつはギルドマスターだ。最上階の部屋で呑気に指揮しているから見ればわかる」

 思っていたより大物がターゲットだったんだ。そう言えば、なんだか聞き覚えがある名前だったかもしれない。

 でも、ターゲットがギルドマスターなら、やる事は一つだと思う。

「……いい考えがあるんだけどー、どうするー?」

 ryuutaは嫌な予感でもしたのか、警戒しながら『それで勝てるなら』と言って首を縦に振った。

「じゃあとりあえずー、適当に突撃しておいてー」

 私が提案したのは囮作戦だ。ryuutaが囮になっている隙に、私がYOSHIDって人の所まで行く。

 それを聞いて顔を歪ませたryuutaは、何か文句を言おうとしていた。でも言われる前に私がハイドで姿を眩ませたものだから、何を言うでもなく、ただ大きな舌打ちをしてマンホールに突撃した。

 マンホールの蓋を蹴り飛ばすと、次の瞬間には杖を槍に変えて豪快にプレイヤーキルを始めた。

 その姿はまさに一騎当千。雪崩の如く迫る敵をバッタバッタと倒していく。

 彼が強いのもそうだけど、敵がだいぶ弱いなぁ。レベルも私以下がほとんどで、初心者ばっかりだ。

 まあそうか。強い人は全員アンブラァに向かわせているだろうし、このギルド本部の警備を厚くしたとて、私たちには勝てない。なら少しでも人を増やして時間稼ぎをして、その内に逃げるのが一番賢いやり方だ。

 でも、だとしたら襲撃を聞きつけたYOSHIDが動かないはずがない。囮は完全に失敗だったかな?

 ……いや、そうとも言い切れないか。

「ウグッ!」

 ryuutaは突如として気を失った。そしてその横には、気絶させた張本人……つまり、変装した私が立っていた。

 ryuutaを縄でぐるぐる巻きにして、完全に無力化した時、兵士の一人が話しかけてきた。

「そいつを捕まえてどうするんだ? 侵入者は一人残らず殺せとの命令だ」

 一瞬、偽物だと気づかれたのかと冷や汗をかいたけど、そうではないらしい。

「こいつはアンブラァじゃない。ももでも、hawk bridgeでもない。殺しても復活するなら、捕まえて一度ギルドマスターに意見を聞くのがいいと思ってな」

 いつもの口調だと正体を悟られる心配があるので、口調を変えて喋った。

 突然、一人の女が話し出した。

「待て。お前、アンブラァかももだな」

 その声の方を見ると、何故かアンブラァにそっくりな顔や体格をしている人がいた。服装が全然違うけど、ほとんど見分けがつかない見た目だ。

「なんの話だ?」

「このギルドを守る雑魚にしては有能すぎるんだよ。警備をしてる奴らは正直、寄せ集めのカス供だ。そんな奴が、ryuutaのデータに勝てるはずがない」

 警備は再び戦闘態勢に入った。この人達を蹴散らすのはわけないけど、そうしたらギルドマスターは逃げてしまう。なんとか言いくるめなければ。

「……お前こそ、何者だ? 俺はアンブラァと戦ったが分が悪いと思って逃げてきたんだ。そこでたまたま侵入者がいたから捕まえただけだ。それに、そこで見たアンブラァとお前の姿がそっくりなんだが、それは何故だ?」

「僕はRK。見た目はあくまでフェアにするためだから気にするな」

 おっと、まさかの大本命登場か。こいつ相手なら、流石にハッタリはこれ以上通用しないか。

 そう思って白状しようと思った時、巨大な地鳴りが何度も起こった。

 何かと思い周りを見てみた。見なければよかったと心底後悔した。

 何かとてつもなく巨大な体躯の化け物が迫っている。色々な生物のパズルとでも形容すれば良いんだろうか。一応人型を保ってはいるものの、気持ちが悪い。

 それに恐れ慄き、その場にいた兵士は一斉に逃げ出した。

 それを見て、化け物は縮こまったかと思うと、バネのように元のサイズに戻り、そのエネルギーを使って跳躍をして見せた。

 化け物の身長の10倍は跳ねたかと思うと、変なガスを噴射する事で急降下した。

 そしてクレーターを作りながら着地した場所は、兵士達が逃げようとしていた出口の正面。

 兵士達は逃げようとしたが、もう遅かった。一方的な蹂躙が始まり、手を振り回すだけで兵の7割ほどが消滅した。

「……RKくんさー、もしかしてアレって君のかなー? だったら正直ー、降参したいんだけどー」

「……なわけないだろ。アンブラァが突然あんな姿になったんだってよ」

 アレがアンブラァ? どう見たってただの化け物だ。

 仲間なら心強くはある。でも、正直一緒に闘いたくはない。と言うか、仲間だと思われたくない。

 ……いっそ裏切ってしまおうか。

 いやまあ冗談だけど、ずっとあの姿のままと言うのならそれも一つの手だ。それくらい醜い。

 とりあえず、あんな姿をずっと見ていたら目が腐りそうなので、建物内に侵入した。ついでに、ギルドマスターがいないか探してみよう。もう逃げられている気もするけど。

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