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廃人による文字化け

 しばらく探索をしていると、小さい村を見つけた。ダンジョン内に村があるなんて、初めて見た。

 私が足を踏み入れようとすると、hawk bridgeさんが止めた。

「まあ待ってくれよ。こんな所に村なんて、明らかに怪しいだろう。罠かも知れない」

「そうだな。また看板でも探すか」

 分かれて探索してみると、すぐにRKさんが声を上げた。

「見つけた。これじゃないか?」

 その看板には0から9まで、AからFまでの文字が並んでいた。

「16進数か。『この村の依頼をこなせ』だそうだ」と私は呟いた。

「驚いたな。16進数を解読できるのか」

 昔ゲームを作っていたおかげで、16進数はお手の物だ。

「昔ちょっとな。とりあえず村が安全かどうかは分からないが、入らなくてはならないようだな」

 そう言って私は村に入った。それに続いてみんなも入った。

 田舎って感じの村で、大体10世帯くらいの家がある。お世辞にも広いと言える村じゃないけど、結構長閑でいい村だ。

「とりあえず、一番デカい家に入ればイベントが進行するんじゃないか?」

「ほお。なんでそう思うんだい?」

「いや、ゲームなんてそんなもんだろ」

 二人の会話を聞いて私は一番大きい家を探した。すぐに一際大きい建物が目に入ったので、そこに入った。これが現実なら不法侵入になるだろうけど、ここはゲーム内。なんなら物色しようとも、略奪をしようと、文句を言う人すらいない。

 家の中では料理をしている老婆と、座布団の上に座っている老爺が居た。

「おい爺さん。何か困った事はないか?」と私は話しかけた。

「縺翫♀蜍???ァ倥?ゅ←縺?°謌代??r螟ァ縺?↑繧狗⊃縺?°繧画舞縺」縺ヲ縺上□縺輔>縲」と老爺は奇声を発しながら泣きついてきた。

 不気味で思わず蹴り飛ばしてしまうと、すぐに立ち上がりバグを発生させながらもう一度泣きついてきた。

「縺翫♀蜍???ァ假シ√←縺?@縺ヲ縺励∪縺」縺溘?縺ァ縺吶°竅会ク」

「キャー‼︎」

 不気味すぎてリアルで叫んでしまった。気分が滅入ってしまったので、コップに一杯の水を注ぎ、飲み干した。

 少し落ち着きを取り戻してから、ゲームに戻った。

「おお勇者様! 我々を大いなる災いからお救いください!」

 あれ? 戻ってみれば、他のNPC同様に堪能な日本語を話していた。何かの見間違いかと思い過去ログを確認しても、やはり文字化けはしていた。一時的なバグだったのかな?

「大いなる災い?」

「ええそうです。この地は大いなる災いにより、モンスターが溢れかえっているのです」

 ダンジョン内に村を作れば当然だろうと思いながらも、細かい所に文句を言っていたらゲームの進行に問題ができそうなので無視して話しを進めてもらった。

「このダンジョンの最上階に邪龍君臨しているのですが、その邪龍が際限無しにモンスターを生み出しているのです。そのせいで村はこの有り様で……」

 この有り様とは言うが、作り込みが甘いのか、この村の民家は新品みたいに綺麗になっている。全然悲壮感が伝わってこないので、なんだか安っぽい劇のような妙な面白みがある。

 それと、最上階と言っていたけど、多分本当は最下層って言いたいんだろうなぁ。最上階は入ってきたあの階だ。多分制作段階では上がって行くダンジョンの予定だったんだろう。他のダンジョンも大体上がって行く方式だし。

 色々酷いなぁ、と思いながら、老爺に返事をした。

「分かった。邪竜を倒せばいいんだな」

「頼みます勇者様。邪竜を倒してくださればこの村に伝わる『遐エ鬲斐?閨冶」?y』をお譲りしますので、どうか邪竜を討ってください」

 また文字化けか。もうだいぶ慣れてきたけど、報酬が分からないのは結構困る。

 とは言え、今回の目的はあくまで攻略。報酬なんて思い出の結晶みたいな物。その物自体はどんな物だっで構わない。極端な話、薬草一本だって構わない。

 私はすぐに老爺の家を出た。それに続いてhawk bridgeさんもRKさんも一緒に出てきた。

「じゃあ一階に戻るか」とRKさんは老爺の話を疑わなかったのか、最上階に行こうと提案した。

「ああ、お爺さんの話かい。いや、多分あれは誤字だろう」

 私が返事をしようとしたけど、先にhawk bridgeさんが口を開いていた。

 RKさんは小声で「なるほどな。そう考えるのか……」と呟いていた。

「手分けして次の階に続く階段を探すぞ」

 バラバラに分かれ、この階の探索を始めた。

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