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廃人によるダンジョン侵入

 次の日になった。今日は朝からhawk bridgeさんももももログインしている。RKさんと私は一時間毎に交代でダンジョンを見張っていた。

 全員揃った瞬間、ももがすかさず茶化してきた。

「ほらマスター。かっこいい言葉で士気をあげでよー」

「……初ギルドイベントだ。頑張れ」

 いきなり言われたって流石に無理だ。

 変な空気になってしまったけど、とりあえずみんな揃ってダンジョンに入った。

 入った瞬間、入口はオーロラのような光を発した後、外の景色を変えた。外はプログラム剥き出しとでも言うべきか、暗黒の中に白いプログラムが羅列された風景が延々と広がっていた。

「うわー、凄いねー」とももは小さく声を出した。

「そうだな。だが、凄いのは外だけじゃないようだな」とRKさんは緊張感の篭もった声で注意を促した。

 振り返ると、5メートルほどの西洋の甲冑の化け物が立っていた。見た事ないモンスターだ。レベルは……450⁉︎ プレイヤーのレベル上限が120の事を考えれば、約3倍。

 甲冑は剣を構え、私たちを薙ぎ払うように全員を弾き飛ばした。ももは寸前で避けたものの、私たちはHPの半分以上を減らされた。

「なんだいこれは! 最初の雑魚がこれなのかい⁉︎」

 hawk bridgeさんは怒っているように叫んだ。

「いや、門番だろ」

 私は内心焦りながら冷静を装ってそう言った。

「残念だが、hawk bridgeが当たりだ。こんな奴がウヨウヨしてるから誰も攻略できないんだ」

 なるほど。なかなか凄まじいダンジョンだ。確かに普通のプレイヤーには攻略は不可能だろう。

 話し合いが終わった瞬間、私達は打ち合わせもしていないのに陣形を完成させた。hawk bridgeさんとももが敵に張り付き、その数歩離れたところからRKさんは攻撃しては避けてを繰り返している。私は一番後ろで魔法を使っていた。

「最初から全力だよー。アーマードゾーン」

 ももが必殺技で大ダメージを出すと、ヘイトが溜まり、甲冑は彼女を狙い出した。

 その大きく重厚な見た目からは想像できないほど、速い速度で剣を振り回しているが、全て寸前で回避している。

「こっちも見てくれないかな? アテンション」

 hawk bridgeさんはヘイトを自分に向ける事で、ももが攻撃しやすくした。敵の攻撃は全て盾で防いでいる。

 RKさんは静かに淡々と攻撃し続けていた。そのさらに後ろで、私は魔法を使っている。

「アルケイデース……ゲニウス……ウェポンチェンジ『ナックル』オーヴァーブロー」

 私は拳に力を集中させた。

 その間にも戦闘が続き、大体敵のHPは三分の一程度まで減っていた。

「喰らえ。オーヴァーブロー」

 私が必殺技を放つと、全員が一旦敵から離れた。そして避けられなかった甲冑にその一撃が当たると、HPが0になり、その場で崩れ落ち、消滅した。

 みんな一様に武器を収納し、ドロップアイテムを確認し終えると、RKさんが口を開いた。

「ふう。こりゃちょっと人間向けすぎるな」

「そうだねー。これなら『カリユガ』を使わなくていいかもねー」

「そういえば、どうしてカリユガを使わないんだい? あれはどう見たって暗器使いの装備だっただろう」

 hawk bridgeさんに言われて気付いたけど、ももは新しい装備をつけていない。

「いやー、流石にずるいかなー、なんてねー。別に何がなんでも使いたくないってわけじゃないからねー。使って欲しいなら使うよー。すっごく強いしー」

「いやいいさ。君の装備だ。君が決めるといいさ」

 ちょっと雑談を終えてドロップアイテムに目を落とすと、パッと見た時は難しくて読めない字なのかと思ったけど、よく見れば文字化けしていて読めないのだと気付いた。

 最初からおかしかったけど、なんなんだろうか。このダンジョンは。ダンジョンの生成位置も毎回ランダムと言う滅茶苦茶な仕様になって、敵は調整ミスではないかと言う程の強さを誇っている。さらにはそのドロップアイテムが文字化けしているなんて、明らかに不自然だし……

 いや、正直大体分かる。バグだろう。多分デバッグ用のダンジョンとか、新開発のダンジョン……にしては難しすぎるか。

 とにかく、プレイヤーができる想定ではないダンジョンが、なんらかのミスでできてしまっているんだ。

 私はそれをみんなに知らせようとして、ふと思った。

 hawk bridgeさんは今、バグやチートなどに対して、アレルギーのように過剰反応している。そこに『このダンジョンはバグだ』なんて言えば、もう二度と会えなくなってしまう気がする。

 私はそのまま押し黙って俯いた。三人がどんどん先に進んでいるその背中を、ただ見るしかできなかった。

「この分かれ道、どっちだろうかね。マスター?」

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