表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/50

廃人による一回戦

 ローマのコロッセオのような会場で二人と合流した私は、今か今かと開催を待っていた。RKさんも大会開始寸前にログインして、準備は万端。

 周りには数百人のプレイヤー。トーナメントに上がれるのはたった八人。景品を手に入れられるのは、たった一人。みんな緊張で今にも倒れそうな表情をしながら、深呼吸をしたり、手に人と書いてみたり、各々の緊張のほぐし方を実行している。

 だけど、私達は堂々として冷静に装備の確認をしていた。

 そして九時を回った瞬間、会場の中心に赤黒い布を羽織った老人が現れた。赤いオーラを纏っていて、イベントキャラだと一目で分かった。

『私はカリ・ユガ。今、ここは私の時代。ここに秩序などない。ただ争え。そして私を満たした者には、その証をくれてやろう。さあここに、『カリ・ユガの時代』を宣言する!』

 その声と共に、眼前にバトルスタートの表示が出た。

 開幕と同時に私は魔法を唱え、ももは姿を消し、RKさんは縮地で遠くに行った。hawk bridgeさんは私の戦いを見ようとすぐ側にいる。

「アルケイデース……ウグッ!」

 私の武器を見て最初から狙っていたのか、魔法を唱えた途端に一人のプレイヤーが襲ってきた。杖は対人戦最弱候補の一つだから仕方ない。

 プレイヤーネームは……醸し人九平次!

「あれ? お前杖か! 悪いな、槍かと思って準備もできてないのに攻撃しちまった」

 ダメージはそう高くないけど、最初に使おうとしていた槍の必殺技が使えなくなってしまった。

「お前はまだ被弾してないな……必殺技を使って上に跳べ」

「よく分かんねーけど、まあ攻撃しちまった詫びだ! 『スレイプニルの召喚』!」

 彼はスレイプニルの機動力で会場の壁に向かって走り出し、壁を台に上空へ駆け上がった。

 それを見た時、もう一つ魔法を使った。

「ゲニウス」

 彼が遥か上空まで移動した時、魔法再詠唱までの時間が終わった。

「ウェポンチェンジ『刀』。縮地」

 これでMPが尽きた。残り23。自然回復は一秒毎に1ずつ回復する。

 私はそれに縮地で接近した後、馬に跨った。自転車の二人乗りみたいな状態だ。

「これでどうなるって言うんだよ?」

「初心者か。黙って見てろ」

 下を見ると、まるで世界終焉。高域まで広がる爆破や、矢の雨に、宙を飛ぶ業火。滝のような濁流や、会場全体を凍らせる猛吹雪。もはや地上にいたプレイヤーは、同士討ちでほとんどが残っていないだろう。

 毎度大会お馴染みの光景だ。広範囲の攻撃を複数のプレイヤーが同時に行うため初手はこんな感じになる。これを避けられるかどうかが大会の最初の難所だ。

「スッゲェ! ありがとな兄ちゃん!」

「どうでもいい。後は自分でどうにかしろ」

 私は未だ上空にいるスレイプニルから飛び降りた。

 生き残ったプレイヤーは数十人。その中の大半は有名プレイヤーのももに夢中。ストーカのように追い回しては、触る事すら敵わずに倒されている。流石の人気にちょっとだけ嫉妬心が生まれる。

「ももなんて化け物と戦うのは馬鹿らしいと思わない? あなたなら名前も聞いた事もないし、簡単に倒せそうよね」

 私の周りには五人の男女がいた。打ち合わせしたように同時に襲ってきたからには、多分仲間同士なんだろう。チーミングがズルいとか言う気はない。私の方がズルいのだから当たり前だ。

 敵が一斉に襲ってきて、今刃先が当たる、と思った瞬間、

「縮地」と技を使って私はそれを避けた。

 敵は刃がお互いに刺さり合い、連携も無くなってしまった。

「……ッ! どこ行った!」

 敵はあたりをキョロキョロ見回しているけど、私は見つからない。

「上だ。一騎当千」

 刀の届く範囲にいた三人は即退場した。

「チクショウ! だが切り札は切らせた! 今がチャンスだ」

 残った二人は合わせて得物を私に振るうけど、寸前で全て避ける。

 そして前回ウェポンチェンジを使ってから四十秒が経った。

「お前達には無理だったな。条件付きウェポンチェンジ『拳銃』」

 説明すると、ウェポンチェンジの元のMP消費量は500。それに使用制限が三つ付いているので、半分の半分の半分。つまり62.5。端数は切り上げなので63。

 私のMPは23から四十秒経って63。ピッタリ使えるだけのMPがあった。

 私は後ろに飛び跳ね、少しの距離を取ってから、銃を構えた。

「成形炸裂弾」

 仲良く近くに居た二人は、成形炸裂弾の爆破範囲にきちんと収まってくれた。そしてこの二人を倒した事で、一パーティ綺麗に全滅を完了させた事になった。

 残り人数は九人。後一人脱落すれば一回戦終了。

 一息ついた瞬間。私は背後から殴り飛ばされた。

 武器はナックル。さっきまでの有象無象の集まりと違って、かなりの実力者らしい。一撃でHPが半分になった。

「おっと、もっと弱っていると思っていたけどな」と敵はニヤニヤ笑いながら呟く。

「あてが外れたか?」と私は強がって返事した。

「いいや? 他の奴らが弱すぎて話にならなかったからな」

「そうか。せっかく生き残ったのに、俺と戦うなんて不幸だな」

 私は銃を構えて一発放った。

 それをするりと避け、懐まで踏み込んできた。

「もらった」

 銃を向ける時間もない。でも私には関係ない。一発明後日の方向に撃った。

 さっきの弾丸が跳弾している所に、今放った弾丸がぶつかり、軌道を変えた。

 それは敵を捉えていた。

 次の瞬間……敵をすり抜け、弾丸は私を撃ち抜いた。

「ウグッ」

「フハハハハ! これで終わりだ」

 敵が拳を構えた。終わった。そう思った瞬間。

『そこまで。思ってた以上に楽しませてもらった。ここで終わらせるのが勿体無い程にな。今残っている者で、優勝者を決めるトーナメントを行う。初戦は十分後。対戦カードは各自で見ておけ』

 どうやら他で一人倒されたらしい。拳を治めた敵は、

「命拾いしたな」と言って立ち去った。

 この大会、一筋縄では行かないようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ